日本の漁業は崖っぷち

2013年12月2日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 水産庁からの「メジマグロを食べないで」で話題になったクロマグロの漁獲枠(『クロマグロも崖っぷち 水産庁「メジマグロ食べないで」のワケ』参照)も、日本海で自主的に設定された2013年の漁獲枠は、2012年の漁獲数量が580トンであったのに対し2000トン設定と、もともと大きすぎました。これでも自主管理の枠内に収まっており、結果として昨年より多い1300トンが獲れてよかったという内容になっています。ただし2004年以降で2000トンを超えたのは僅か2回しかなく、これも北海道でのサバ漁同様に目標漁獲数量のようなもので、管理しているようで管理になっていません。設定する側も、そのことは分かっているはずです。

 日本の漁獲枠は、海外の漁獲枠制度とその運用を知っている関係者にとっては「あり得ない」制度とその運用なのです。実際に漁獲されると推測される数量よりも多く割り振られているケースが大半で、しかも水揚げ数量が増加を始めると、漁が中断しないように漁獲枠も増やしてしまいます。

 使い切れないお小遣い(漁獲枠)をもらって文句を言う子どもはいないでしょう。しかし、結果として親の生活(水産資源)が苦しくなってしまいます。一方、毎月決められたお小遣いを渡していき(個別割り当て方式)、一時的に家計が苦しい時は、理由をきちんと説明して我慢してもらう(正しい情報を提供と漁獲枠の減少)ということをしていれば、適切な金銭感覚が身につきます。

 残念ながら前者が日本の漁業を象徴であるのに対し、後者は個別割当制度に基づいて漁業を行っているノルウェーをはじめとする漁業先進国の姿なのです。日本のやり方で、親にとってひとつだけ良い点があります。それは、親が子どもに「お小遣いが少ない!」と文句を言われないことです。しかしそれでも、結局はお金が無くなってしまい文句が出てきます。そしてそれが様々な形で補助金として税金から補われることにもなることでしょう。これは、子供が悪いのでしょうか? 悪いのは、放任して管理をしていない親(国)の方ではないでしょうか?

小さいサバは逃がすノルウェー

 話をサバに戻しましょう。今年のノルウェーのサバ漁では珍しい現象が起こりました。多くの漁船が海に出ているのに水揚げのペースが上がりませんでした。例年一回で軽く300~500トン漁獲してくる漁船が、今年の秋は、50~100トンと少量しか持ってこないケースが増えました。何も獲らずに帰ってくる漁船も後を絶ちません。

 ライブ船舶マップのサイト www.marinetraffic.com/jp/ には、VMS(衛星通信漁船管理システム)が搭載されているので、漁船名、そしてどのような航路を辿ってきたのかがリアルタイムでわかります。ちなみにこのサイトは日本の漁場も見られますが、驚くべきことにVMSをつけている漁船がほとんどないことがわかります。日本の漁業は競争ですので、漁場を教えたくないのです。念のためですが、漁船がいないわけではありません。何日も多数の漁船が出ているのに、一隻当たりの水揚げが少ない。日本ではこのような場合「不漁」が頭をよぎります。そして実際に魚が獲れなかったというのもよくあることです。

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