経済の常識 VS 政策の非常識

2013年12月5日

»著者プロフィール

 なぜ成長が必要かと言えばそんなことは当たり前だという人も多いだろうが、日本はもう十分に豊かなのだから、成長よりも分配を考えた方が良いという人も多い。効率を上げるためにあくせくしたり、寝食を惜しんで新製品を開発したり、人々を厳しい競争にさらすようなことは止めた方が良いというのである。だが、成長しないで良いという人も、現在の豊かさは維持できることが前提になっている。もう豊かだから成長しないで良いというのはそういう意味だ。しかし、効率を上げたり、新製品を開発したりしないで、現在の豊かさを守ることができるだろうか。昨日と同じことをしていては現在の豊かさも守れない。そうなってしまう2つの理由がある。

高齢化すれば貧しくなる

 第1は、日本が高齢化することである。高齢化するとは、働く人が少なくなって、働けない人が多くなるということである。すると、総人口に対して働く人が少なくなるのだから、働く人一人当たりの生産物が増えなければ総人口一人当たりの生産物は少なくなる。高齢者に対する年金、医療、介護の水準を下げなければやっていけない。

 働く人(15-64歳人口としておこう。15-64歳を生産年齢人口とするのは国連の慣習である。先進国では20-64歳とすべきだという議論があるが、長期的には大した違いにはならないので国連の慣習に従っておく)の全人口に占める比率は、2012年では62.9%だが、2060年には50.9%になる。働く人一人当たりの生産物が同じなら、全人口の一人当たりの生産物は19.1%減となる(50.9÷62.9-1)。貧しくならないためには、働く人一人当たりの生産物を2割大きくしなければならない。

 すなわち、効率を上げなければならず、成長しなければならないということである。働く人のやる気を維持するために、働く人の取り分をせめて下がらないようにするためには、働かない人、高齢者の取り分を減らすしかない。

 さらに、雇用の問題もある。働かない高齢の取り分は下げざるを得ないということが分かれば、人々は今ある雇用にしがみつくようになる。すでに働いている人をクビにするのは難しいから、これから働く人、すなわち若い世代の仕事が減ることになる。成長すれば新しい仕事も生まれるから、その後は若い世代も仕事を得やすくなる。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る