2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月13日

 台湾が民主主義と国益を守りつつ、中国と話し合うためには、健全で侮りがたい軍事力を持つ必要がある。弱いことで平和が維持されると考えるのはあまりにナイーブである、と論じています。

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 馬政権になってから、中国との間の「外交休戦」などの対中宥和策が、台湾軍内の士気や警戒心にマイナスの影響を及ぼしつつあるのではないか、との見方が出ていましたが、論説は、それを裏付けるものとなっています。

 ただし、馬政権が防衛面で何らの措置も取ってこなかったというのは、やや一面的に過ぎるでしょう。

 最近、台湾国防部が公表した白書は「2020年には、今の傾向が続けば、中国は台湾への侵攻能力を完成させる」と述べ、経済を軸に対中関係改善が進む中、引き続き軍事面での警戒感を緩めるな、と呼びかけています。また、馬政権は米国製の最新型対潜哨戒機(P3C)12機を購入し、その第1機が最近、台湾に到着しています。次の課題は潜水艦能力の補強にある、と国防部は表明しています。

 台湾の国防にとっては、中国と台湾の軍事力を対比するだけではバランスのとれた評価は出来ません。米国が「台湾関係法」に基づき、どこまで台湾の防衛にコミットし続けるかがポイントになりますが、米国のなかに中台間の話し合いを黙って観察するだけ、という雰囲気が存在することこそ懸念材料であると言わねばならないでしょう。

 他方、興味深い点は、中台の経済関係や人的往来の進展にかかわらず、「台湾人意識」が引き続き強まっていることが、最近のアンケート調査によく示されていることです。これは、中国人との接触が増えた結果、中国人との相違点がより強く意識されるようになった、という要因もあるのかもしれません。

 通常のアンケートでは「現状維持」「独立」「統一」の3つの選択肢の中では、85%程度の圧倒的多数の人たちが、「現状維持」を選ぶのが普通です。しかし、最近、国民党系テレビ局「TVBS」のアンケートが、あえて、もしも「独立」か「統一」かの2者択一の選択を迫られた場合にどちらを選ぶか尋ねたところ、71%の人々が「独立」を選び、18%が「統一」を選びました。このような数字は決して固定的なものといえないにせよ、台湾において「台湾人意識」が着実に強まっていることを示唆しています。それは、台湾の国防にとっても明るい材料です。

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