2024年4月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月27日

 今回、ガンビアが突如このような政策決定を行った背景については、公開された資料は極めて限定されており、推測の域を出ません。台湾側にとっては、この決定は寝耳に水であり、他方、ガンビア側は「国の戦略的利益を考慮して」決定したと述べ、当分、中国と国交を結ぶことはない、としています。そして、中国政府のスポークスマンは「自分たちも海外の報道を通じてはじめて知った」と述べています。

 これらを額面通り受け取るか否かについては、今後しばらくガンビア、中国の動きを見る以外にありません。現段階で言えることは、ガンビアが台湾当局からの経済援助を受けられなくなることを覚悟の上で断交した以上、それに見合うだけのなんらかの具体的利益を考慮したに違いない、ということです。

 もし中国が背後で動いたとの仮説に立つならば、次のような要因が背景にあると考えられます。目下、馬政権は、中国との政治対話にそれほど積極的ではないと見られ、中台間のサービス貿易協定についての台湾内部の審議も停滞しています。これらのことに対し、中国側が、焦りや不満を持っているとしても不思議はありません。習近平は、最近訪中した国民党名誉主席・呉伯雄に対し、中国と台湾の関係を後の世代までいつまでもこのまま引き延ばすことは出来ない、との趣旨の発言をし、これに対して、呉はやんわりと、台湾では民意を考慮しなければならないので時間がかかる、と応答しています。

 目下のところ、中国は表立って馬政権に敵対する形をとらずに、実質的に台湾を揺さぶる方途を考えているのかもしれません。もし、ガンビアと類似のケースが、残る22か国でも起こるとすれば、台湾の政権にとって、より大きな打撃となります。習近平体制下の中国は、胡錦濤時代と違った対台湾政策を打ち出そうとしているように見られますが、ガンビアのケースはその兆しを意味するものかもしれません。

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