2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2014年1月2日

 しかし大震災後、原子力発電所が停止し、日本の電源構成はまるで40年前と同じ化石燃料頼みに逆戻りしてしまった。11年度の中東依存率は43%にまで上昇し、エネルギー安全保障上、問題となるレベルに来ている。

 この状況下で脱原発の切り札と期待されているのが、シェールガス、再生可能エネルギー、電力自由化であるが、いずれも欧米の現状を直視するとあてにならない。シェールガスの輸入は、まだ不透明な要素が多く原子力を代替するほどの価格で輸入可能か分からない。再エネは先行した欧州の状況を見る限り、安く供給が可能な電源になるには、まだまだ時間が掛かる。英国の経験によれば、電力自由化が電力価格の下落をもたらすかどうか定かではない。

 米国はシェールガスの採掘に成功し、ロシアを抜いて世界一の天然ガス生産国になった。天然ガス価格も12年の底の時点の価格よりは上昇しているものの、依然、欧州、アジアの価格の3分の1~4分の1だ。しかし、米国産のLNGが安く日本に輸出される可能性は薄い。

 米国では、安価な国内炭による発電から天然ガス発電への移行が進んだが、オバマ大統領はさらに脱石炭を加速させる温暖化対策を打ち出している。実行されれば天然ガス火力の比率はさらに高まる。天然ガスには燃料だけでなく、石油化学の原料としての需要もある。いま米国ではシェールガスを原料とする化学プラント増設案件が97もある。総投資額は720億ドルだ。需要増は価格を押し上げる。

 価格上昇要因はまだある。パイプライン増強の必要性だ。米国には天然ガスパイプライン網が縦横に巡らされている。総延長は50万キロ近い。しかし、需要が増え、場所によってはパイプラインの輸送能力を上回るようになってきた。シェールガスの生産は、テキサス、ルイジアナ州から開始されたが、十分なパイプライン網のないノースダコタ州などに移ってきている。パイプライン増設費用は需要家負担になる。

 液化プラントの建設コスト、液化・輸送費用なども含めて考えると、シェールガスが日本向けに大きな価格競争力を持つか疑問だ。


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