2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月30日

 ここ数十年の日本の二酸化炭素排出量減は、経済構造の変化によるところが大きかった。産出量に占める、鉄鋼業のようなエネルギー集約産業の割合は、より効率的な機械製造業などに比べて縮小し、工場が海外に向かうにつれて、製造業はサービス業に道を譲った。ただ、この調整のペースは減速している。産業空洞化をめぐる議論は、日本の有権者が製造業を放棄することを望んでいないことを示している。

 世界の気候関連官僚が日本の新目標にショックを表明しているにもかかわらず、日本は、新しい目標を発表したことで、「世界で最悪の汚染者」とはならずに済むであろう。むしろ、日本は、地球温暖化の予言の不確実性と経済的現実を賢明にバランスさせる国となるであろう、と述べています。

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 日本が気候変動枠組み条約第19回締約公会議(COP19)に際して1990年比25%削減という2009年の非現実的な国際公約を撤回したことを、良識的な政策として評価し支持する、日本にとって有り難い社説です。社説が指摘する「地球温暖化の予言の不確実性と経済的現実を賢明にバランスさせる」という大前提に立った上で、気候政策の遂行には、以下のような観点が必要でしょう。

 2020年までに2005年比で3.8%削減という新しい目標は低すぎるのではないかとの批判がありますが、新目標は、原発の稼働がゼロであると仮定した、あくまでも暫定値です。今後、電源構成における原発の割合が合理的な値に設定されるとともに、より高い数値目標となるでしょうし、いささか邪道かもしれませんが、CO2削減への国際的要求を、原発稼働再開のための外圧として利用することもあってよいでしょう。

 気候変動枠組み条約が求めていることは大きく二つあり、気候変動の防止と、気候変動への適応です。最近の大きな潮流は、後者を今までより重視するようになっているように見受けられます。日本がこれほど低い目標を発表することができた背景の一つはそこにあるのでしょう。日本は、気候変動による災害の増加への対応のため、途上国に対して、今後3年間で160億ドルの支援をすることを発表しています。

 一方、途上国側からは、フィリピンを襲った猛烈な台風による災害を象徴的な例として、気象災害に関する国際的な保険制度の創設を求める声も上がっています。導入するとすれば、温暖化に伴う緩慢な変化(例えば海面上昇など)への対策に限るなど、無制限な南北間の富の再分配とならないよう、注意を払って対応する必要があります。

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