2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月7日

 何人もの政治家が彼らに接触しようと試みたが、Liulinらは、捕まるのを恐れて返事をしていない。我々は、政治家に国民が望んでいることをしてほしいだけだ、とLiulinは言う。また、国民党も民進党も彼らを恐れている、とHou教授は述べている。

 台湾で政治論争に変化が見られるようになってきた中で、白シャツ軍が生まれた。台湾の独立に関する議論が行き詰まりを見せる中、次第に国民の間に、台湾が自治権を持つ現状を受け入れ、独立の問題を先送りする論調が主流となってきていた。

 一方、台湾人としてのアイデンティティは高まりを見せている。国立政治大学選挙研究センターによれば、1992年には、「中国人」ではなく「台湾人」と自分を位置づける人の割合は17%であったが、昨年は54%にまで上昇している。

 白シャツ軍による運動がその活動を今後も継続していけるかどうか疑問を呈する専門家もいるが、Liulinは、自分以外の人のために行動しようという精神が広がっていけば、組織的な活動ができなくても構わない、と言っている。白シャツ軍の今後の活動は、台湾の若い世代の政治的関心を引きつけ、政治問題を解説するような、台湾政府を監視するサイトを作ることにある、と指摘しています。

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 退役を間近に控えた24歳の兵士が上官による虐待で死亡したことを契機として、白シャツを着た若者が総統府前広場に大量に押し寄せたとされる社会運動を通して、台湾の若い世代における、政治への関心、また「台湾人」としてのアイデンティティの高まりに目を向けた解説記事です。

 台湾では、二期続いた国民党政権の政策の限界も大体見えて来て、台湾の将来に影響を与えるような新しい動きが出てきています。一つが、王金平問題をめぐる国民党内部の分裂と大陸系中国人の影響力の低下であり、もう一つは今回の記事が紹介している、この白シャツ運動です。いずれも、国民党の大陸系による支配、そしてその背後にある大きな影である中国の影響力に対する、直接の反抗ではないとしても、台湾人の存在を示す事件です。

 総統選挙まで、まだ一年以上ありますが、台湾の政情、--あるいはそこまでは行かなくても、民情--に注目すべき動きが出てきたと言って良いでしょう。

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