2024年4月16日(火)

日本の漁業は崖っぷち

2014年1月8日

日本は資源管理で「国連海洋法を遵守している」と
胸を張って言えるのだろうか?

 国連海洋法条約における水産関係でもっとも重要な事項は、同条約の第5部「排他的経済水域」に規定されています。沿岸国は200海里の範囲内で排他的経済水域(EEZ)を設定することができます。その場合、沿岸国は、同海域における生物資源について、漁獲可能量(TAC)を決定するとともに、「適切な保存・管理措置をとる義務を負う」ことになることが規定されています。

 これにより、TAC魚種の設定がなされているわけですが、問題は、国による基本計画の策定の中に「資源動向をはじめとする科学的データに基づき『漁業経営に与える影響等を勘案した上』で特定海洋生物資源の魚種別の漁獲可能量を決定する」とあります。この『漁業経営に与える影響』という言葉を重視する点が、成長を続ける国々との決定的な差であると思います。

 成長している国々では科学者のアドバイス=TAC(漁獲枠)というものであり、政治や経営のことは、ほとんど考慮されません。それは科学的な根拠に基づく資源管理と資源回復こそが、結果として漁業経営に好影響を与える要因であることを誰もが疑わないからなのです。新潟県の甘エビの例のように、個別割当にすることで減少する水揚げ金額を一時的に、県や国で補てんする「収益納付」という方法もあります(第5回参照)。資源の回復により、漁業者が適切な割合を最終的に返還するので、長期的には県にも国にも負担はかかりません。このように、最初から漁業者(誰にも)に負担をかけないやり方も存在するのです。

 TAC魚種を増やさず、そのたった7魚種でさえも実際に漁獲できる数量よりかなり多く獲っていることから、「世界第6位の広大なEEZを持つ日本は国連海洋法を十分に遵守していないのでは?」と指摘された場合に、果たして反論できる立場にあるのだろうかと筆者は心配しています。漁業で成長している諸外国に、遵守の有無も含めて客観的に指導を仰いで問題点を指摘してもらい、それを改善していくことが重要なのではないかと考えています。

 日本の水産業が抱える問題は明確です。水産資源管理の問題を、子供から大人まで皆が関心をもち、世界と日本の水産業を比較して、客観的な事実に基づいて学びそして議論すれば、ものすごく身近で重要な話題として大いに盛り上がるでしょう。現実を知ることで、事実と異なる都合の良い海外の情報は排斥され、あるべき方向に国全体が向かっていけることに疑う余地はありません。

 

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