ワシントン駐在 政治部記者が見つめる“オバマの変革”

2009年5月1日

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飯塚恵子 (いいづか・けいこ)

読売新聞政治部次長
上智大学卒業後、読売新聞社入社。政治部記者として首相官邸、自民党、外務省、防衛庁などを担当。1998年から2000年まで那覇在住、03年から06年までロンドン特派員。

 オバマ米大統領は、日本とどのぐらい接点があるのだろう。実は、数少ないナマの接点の一つは、意外な所にあったのでは、と思っている。

オバマ一家が約2週間滞在したヘイ・アダムズ・ホテル。正面玄関前にはメディアのカメラ用のやぐらがずらりと組まれ、一家の動静を追った写真提供:ヘイ・アダムズ・ホテル

 大統領とその一家は、今年1月20日の就任式直前の約2週間、ワシントン中心部の老舗ホテル「ヘイ・アダムズ」で過ごした。80年余の歴史を持つ高級ホテルで、公園をはさんでホワイトハウスの隣にある。人気絶頂のオバマ氏とミシェル夫人、そして、愛娘のマリアちゃんとサーシャちゃんが泊まったことで、全米の注目を集めた。

 実は、このホテルの社長が日本人女性であることは、あまり知られていない。社長は、榎戸かし代さん。このホテルのマネージメントを担って20年、昨年社長に就任した。アメリカの由緒正しいホテルの趣を守りながら、随所に先端技術を取り入れ、高い評価を得ている。

 その先端技術の一つが日本の温水洗浄便座だ。温かい便座で、洗浄水の温度や水圧は、コンピューター制御で調節可能。水質など様々な事情が日本と違うとかで、アメリカではなかなか普及しないが、オバマ一家が滞在したホワイトハウスを一望できる部屋「フェデラル・スイート」には備え付けられている。

 榎戸さんによると、日本人の宿泊客はこのトイレをまず喜ぶという。ヨーロッパには古くからビデ設置の歴史があるので、欧州人は自然に受け入れるという。一方、アメリカ人の反応は、おおむね「?」だという。

 一家は温水洗浄便座を使ったのか?榎戸さんはニコニコしながら「お客様のプライバシーはお話できません」と口をつぐむが、10歳と7歳の好奇心いっぱいの小さな子供たちが2週間も過ごして、あの装置に関心を示さないはずがない。快適生活を追求した日本独自のあのトイレ技術は、オバマ一家が「日本」にじかに触れた印象深い経験だったのではないか、と考える所以である。

 前置きが長くなったが、オバマ氏がこれまでの人生で日本の地を踏んだのは、短い鎌倉旅行や飛行機のトランジットなどわずかな一瞬しかなく、直接的な日本経験はそう豊かなわけではない。政策面でも、選挙期間中から新政権の政策を練ってきたオバマ・チームの中に、日本で知られる知日派は数えるほどしかいなかった。日本はアメリカと良好な関係であるがゆえに、かえってオバマ政権のレーダーのはじっこの方にしか存在していなかった。

 しかし、4月5日に大統領がプラハで行った演説の余波で、少し空気が変わりつつあるようだ。

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