2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月17日

 台北にとって、最も困難な仕事は、米国など、TPP参加国の中にある不満を満たすことかもしれない。昨年、台北は、ようやく米国産牛肉の輸入を解禁したが、米国産豚肉について同様の禁輸措置があり、台湾の首相は、同じような妥協はしないと公約している。これは、交渉を駄目にする要因となりうる。

 台北の当局者は、TPPが経済成長と国家安全保障の双方に関わる問題である、との認識を深めている。2年余りの残りの任期における、馬英九にとっての最も重要なテストの一つは、NZとシンガポールへの貿易自由化から得られたモメンタムを利用できるかどうかであろう、と述べています。

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 馬英九による、中台関係を経済面を手始めに強化する政策は、当初、中国によって経済的に、そして、ついには政治的にも取り込まれ、台湾の独立が脅かされるのではないか、という懸念を呼びました。しかし、馬英九路線は、政治的には、中国に吸収されることを望まない強い民意があり、経済的にも、中国経済の鈍化が台湾の成長率を大幅に下げたり、雇用が失われるなど、台湾にとって余りメリットがないことが明らかになってきて、行き詰まりを見せています。その結果、台湾が、対中依存を低下させるべく、FTAを積極的に模索し始めたのは、台湾の政治的孤立を防ぐ意味があり、正しい方向であると言えます。社説が指摘する通り、国交のない国との間で初めてFTAが発効したことの意義は大きいものがあります。

 そして、台北の当局者が、TPPが経済だけでなく安全保障の問題でもある、との認識を深めているのは、心強いことです。次の総統選で、政権交代すれば、あるいは、国民党が政権を維持したとしても、この流れは変わらないと期待してよいでしょう。社説が指摘する通り、確かに、台湾には乗り越えるべき課題が多いですが、台湾の貿易自由化推進は、台湾がアジア太平洋地域における自由主義陣営の有力なプレイヤーとなることを意味するので、日本にとっても歓迎すべきことです。台湾とのFTAや台湾のTPP加盟を推進することにより、台湾を支援していくべきです。その前提として、難航しているTPP交渉を出来るだけ早期に妥結させることが必要となります。

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