2024年4月21日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年2月3日

消費増税ショックを
抑える金融の追加緩和

 これは、来年4月の消費増税の負のショックを和らげるためにも、金融政策が使いやすい政策手段であることを示す。金融緩和の効果が多様な経路を通るものであればあるほど、特定セクターで問題を起こすことが少ないからである。前述のように、輸出が急増するのであれば、貿易摩擦の再燃が懸念されるが、そのようなことはない。また、次項で述べるように、効果が建設業に集中する財政政策とも異なっている。消費増税の景気悪化効果が大きければ、さらに金融を緩和して負のショックを弱めるべきである。

 これはアベノミクスの第2の矢、公共事業による景気刺激とは異なっている。第2の矢は、政府が、建設業など特定産業の生産物を大量に買うことである。この結果、建設資材や建設業賃金などはすでに上昇している。実質生産を引き上げる効果が、物価上昇によって抑制される。公共事業の実質GDPを引き上げる効果は、予算で決められた名目支出額を建設物価指数で割ったものによるから、建設物価が上がれば、公共事業の効果は削減される。

 しかも、問題はこれだけではない。日本は、東日本大震災からの復興、福島第一原発事故の処理、東京オリンピックという、重大な課題がある。被災地域の生活を取り戻すためには、住宅や漁港や水産加工所などの再建が何よりも必要だ。福島第一原発から放射能が漏れないようにするためには、地下水が流れ込まないように周りを遮水壁で囲まなければならない。東京オリンピックのためには斬新なデザインの新国立競技場、その他の会場、交通インフラの追加的な建設をしなければならない。要するに、巨額の建設事業をしなければならないのである。

 不要不急の工事をすれば単価が上がって、他の必要な建設工事の妨げになる。第2の矢の財政拡大政策は再考すべき時である。

◆WEDGE2014年1月号より










 

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