患者もつくる 医療の未来

2014年1月24日

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勝村久司 (かつむら・ひさし)

高等学校地学教諭、元厚生労働省医療安全対策検討WG委員

1961年生まれ。京都教育大学理学科卒業。高等学校地学教諭。1990年、陣痛促進剤による被害で長女を失い、医療事故や薬害などの市民運動に取り組む。厚生労働省の中央社会保険医療協議会や日本医療機能評価機構の産科医療補償制度再発防止委員会などの委員を歴任。2015年8月より群馬大学附属病院で腹腔鏡等で死亡事故が相次いだ事件の医療事故調査委員に就任。著書に『ぼくの星の王子さまへ』(幻冬舎文庫)、共著書に『どうなる!どうする?医療事故調査制度』(さいろ社)など。

 健康保険証はクレジットカードと同じようなものです。クレジットカードで支払をする際には、その明細が確認できるように、公費などにより自己負担がない場合の診療についても、明細書発行は必要です。厚生労働省は、「自己負担がない場合にも明細書発行に努めること」と示していますが、公費負担の場合の医療機関の医療費不正請求の報道も繰り返されており、やはり、発行がきちんとなされているかどうかの検証が必要でしょう。

 医療費は、保険料と税金、患者の自己負担で成り立っています。国には中身について国民への説明責任があるのです。

 また、食品添加物を全て表示するようになって、学校でも添加物についての消費者教育が進んだように、国には、情報公開や教育を通じて、国民の「医療情報を十分に活用する力」、すなわち医療リテラシーを向上させる責任があります。診療明細書発行の完全実施は、その第一歩なのです。

「患者本位の医療」を

 無料発行の流れは医療事故や薬害が起きても投与された注射薬名や血液製剤名さえ知ることができなかった被害者たちの声が促したものです。

 厚生労働省は、診療明細書の発行が決まったことを受けて、2010年6月に、ようやく患者が知らない間に使用されていることが少なくなかった子宮収縮剤の使用の際には、説明と患者の同意をとらなければいけない、と薬の添付文書に規定しました。それまでは、使用した薬名を患者に伝えるかどうかは医師の裁量で判断して良いという見解を示していたのが変更されたのです。しかし、いまだに、患者に伝えずに使用した子宮収縮剤による事故が報告されているのが現状です。(過去記事:「出産時の事故から身を守る」参照)

 明細書を保管しておけば、患者側も治療の経過をふり返り、万が一の医療被害に備えることもできますし、それをきっかけに様々な情報にアクセスしていくことが可能になります。

 車検の際に、自動車の修理等の明細書を車検証と一緒に保管しておくように、患者は、領収書と診療明細書はもちろん、検査結果の写しや治療方針を記した説明文書など、受け取った文書は全てまとめて保管しておくべきです。

 医療費の単価は、医療の価値観を決めています。

 心ある医療者たちの中には、救急医療など、本当に必要なところに医療費が健全に回っているのか、という思いを持っている人が少なくありません。国が決めた医療費の単価が患者の価値観に合っているかどうかのチェックも必要です。「患者本位の医療」を徹底させるために、一刻も早い全医療機関での診療明細書の発行がのぞまれます。

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