WEDGE REPORT

2009年5月7日

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シャープをとりまく事情

 太陽電池産業をこれからも日本がリードし続けるためには、信頼性や技術力で優位に立っているうちに、素早く世界展開を図り、シェアとデファクトを握る必要があります。その観点からすれば、シャープのこの新しい挑戦は大いに応援したいものです。

 しかし当然、シャープの大転換は大きなリスクも背負っています。

シャープが示したこれからの投資回収モデル

 シャープがこれから海外に設ける生産会社は、現地のパートナー企業との合弁となりますが、各生産会社に対するシャープの持ち分はマイナー出資にとどまります。メジャー出資で主導権を握らないのも、虎の子の生産技術を売ってしまうのも、一にも二にも、初期投資負担を極力少なくし、早期に投資回収してしまいたいからです。

 逆にいえば、シャープには世界的な現地生産を進めるだけの資金的余裕がないわけです。シャープはここ数年間、亀山や堺を中心に大規模投資を続けてきましたが、急速に進んだコモディティー化によって、液晶テレビ事業はそれほど大きな利益をもたらしませんでした。金融危機が起きる前、なかなか「AQUOS」ブランドが世界的に定着せず、サムスンに抜かれて追いつけなくなっていたシャープは、ソニーや東芝、パイオニアを自陣営に引き込むことによって、「パネル供給企業」としての地位を確立し、末端価格の下落を防ごうと模索していました。

 堺工場にはソニーの出資を仰ぐはずでしたが、当初予定を過ぎても話はまとまっていません。パイオニアへの出資は、大幅な株価低迷で損切りを余儀なくされました。世界的な需要低迷で液晶テレビ事業は、陣営形成より前に厳しい淘汰の時代に突入してしまいました。シャープの大転換は、それだけシャープに余裕がなくなっていることを意味しています。

 シャープは、欧州2位の電力会社、伊・エネルと組む太陽電池の合弁事業が新しいビジネスモデルの第1号になるとしています。業界内からは「エネルは典型的な公的企業で、経営判断が遅く、手を携える相手としては厳しいものがある」との声も聞こえてきます。他の電機企業と比べ社員数も少なく、グローバル展開に必要なノウハウが十分に蓄積されているとは言えないシャープが、どのようにこの新しい挑戦を具現化していくのか、今後も目を離せません。

 

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