2024年4月20日(土)

科学で斬るスポーツ

2014年2月7日

採点は、技術点+演技点-減点

 もう一つ、複雑だが、重要な採点について説明する。採点法が大きく変わったのは2004年~05年シーズン。技術点(テクニカルエレメントスコア)と演技構成点(プログラムコンポーネントスコア)が2つの柱で、奇数の審判員で評価する。点数は平均点だ。

 技術点は、ジャンプ、スピン(回転)、ステップ(細かいターンなど足さばき)などの技の難度と出来栄えを数値化する。個々の技の難度に応じて「基礎点」と、それに3からマイナス3点までの「出来栄え点」(GOE=Grade Of Execution)を加算して、評価する。演技を失敗すれば基礎点も減点される。

 たとえば、ジャンプで最も難しいアクセルの3回転半(トリプルアクセル)は、基礎点8.50点、これにマイナス3から3までのGOEが加算される。基礎点が満点の場合、5.50~11.50点と幅広く採点されることになる。4分の1回転以下の不足は成功とみなされるが、それ以上だと、ダウングレード、つまり3回転が2回転と判定される仕組みだ。

 それぞれのジャンプで基礎点は異なる。1番やさしいトーループの3回転の基礎点は4.1点。もちろん4回転ならトリプルアクセルを上回る10.3点になるという具合だ。同じジャンプでも演技後半に行うと1.1倍に点数がアップする。

 次に演技構成点は、「スケーティングの技術」「技と技のつなぎ」「(身のこなしなどの)演技力」「振り付け・構成」「音楽の解釈(表現力)」の5項目で、各10点満点。0.25点刻みで採点する。ただ加点方式の技術点と、減点方式の演技構成点とのバランスを考え、ショートプログラム(SP、2分50秒以内で演技終了)では0.8倍、フリー(男子4分半、女子4分)では1.6倍の係数がかけられる。つまり50点満点の場合、SPは40点、フリーは80点となる計算だ。

 技術点、演技構成点の加算のほかに、減点がある。転倒は1回につきマイナス1点だ。採点のルールは五輪ごとに変わる。現在のルールは、バンクーバー五輪後の2010~11年のシーズンに改正された。トリプルアクセルの基礎点は8.20点から8.50点に上昇するなど、ルール改正は演技構成に大きく影響する。

バンクーバーでは技術で負けた浅田

 この採点法をよく知ると、浅田が、バンクーバー五輪で敗北した理由が見えてくる。図5は、バンクーバー五輪における浅田真央と金妍児の得点である。


新着記事

»もっと見る