ベテラン経済記者の眼

2014年2月10日

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経済界の中興の祖となれるか

 そもそも安倍首相と経団連の間には隙間風が吹いていた。2012年の安倍政権の誕生前に米倉会長が安倍氏の唱えた大規模な金融緩和策などの経済政策を「無鉄砲」などと批判したことなどをきっかけに安倍氏と米倉氏との関係はぎくしゃくし、安倍氏は米倉氏のことを快く思っていなかった。焦った米倉氏がその後修復しようと試みたものの、結局最後まで溝は埋まらなかった。このあたりの経緯は1月10日の毎日新聞が「政権との関係改善期待」と詳しく報じている。

 1月15日の読売新聞のように歴代会長の出身会社の規模を比較したところもあった。住友化学出身の米倉氏が経団連会長になった時も指摘されたことだが、会長の出身会社ともなると、さまざまなイベントへの寄付など資金的な貢献も求められる。会長社の出す金額をみて副会長社が水準を決めてゆくからだ。会長は公的な仕事にとられる時間も増え、経営者として社業に専念できる時間は制約される。このため有能なスタッフも必要となる。経団連事務局の関係者は「経団連職員が支えるので問題はない」と説明するが、各種制度や海外事情などに高度な調査・分析能力が求められ、自前の多くの有能な人材は不可欠だ。トヨタ自動車の豊田章一郎氏が会長になった時には、周囲を多くの優秀なスタッフで固めたことはよく知られている。

 その後、1月27日に榊原次期会長が米倉現会長とともに記者会見したことを受け、新聞やテレビでは続報が出たが、このタイミングでは、榊原氏を待ち受ける課題について指摘した論調が目立った。産経新聞は翌28日の朝刊で、官民の連携の重要性、春闘などへの対応、経団連の存在意義向上などの課題を列挙した。

 これに前後して新会長の課題については各紙が社説などでも論じていたが、経団連が再浮上のためにどのように存在感を出してゆくかはやはり今後の経済界の課題だろう。ここ数年の経団連は政治との距離を測りかね、会長が「財界総理」と呼ばれたかつての輝きを失っている。報道的にも経団連の会長人事がさほど大きなニュースにならないという状況になりつつあるし、各メディアのニュース判断にもある種の「迷い」があるようだ。そういう意味でも、単なる業界団体の長ではなく経済界の中興の祖となれるか、新会長のふるう手腕に国内外の注目が集まっている。

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