2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月24日

 しかし、一つの重要な面において、中国は米国と同じ道を辿っている。今日、中国には何千もの環境NGOがあり、その多くが米国のカウンターパートとともに、地方当局に正確な汚染統計を開示するよう働きかけ、中国人のジャーナリストとともに腐敗を精査し、環境法や環境規制を破る企業に対する大衆キャンペーンを行っている。今や、環境問題は、年間18万件のデモの最大の原因である。

 中国の新しい指導者は、環境をめぐる状況を変えようと懸命に努力しているが、それは、あくまで、伝統的なアプローチの範囲内にとどまっている。製鉄所の数から車の数に至るまで、全てをトップダウンで決めようとしており、技術が全ての問題を解決すると信じており、地方当局に環境改善の負担を要求している。しかし、指導者が、硬直化した考えに閉じこもっているとしても、中国の人民はそうではない。北京は上から変化を求めるかもしれないが、中国の人民は下から変化を強く求めている。この、ボトムアップ型の圧力こそが、米国流の政治的伝統を最もよく示すものである、と論じています。

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 エコノミーは、米外交評議会の中国専門家で、これまでも、中国に関して正確な論文や論説を発表しています。この論説は、中国の環境問題についての、極めて明晰な分析であり、中国の環境問題の根の深さ、解決の困難さをよく表しています。

 エコノミーの分析は、中国の現状が1960~70年代の欧米と比較して、遥かに深刻であり、構造的であることを指摘している。それは、中国の人口圧力が欧米とは比べ物にならないほど大きいこと、環境無視については、数百年来の伝統があること(確かに、中国の公共道徳は低い)、また、透明性や法の支配の達成が困難なことを挙げていますがが、いずれも説得力があります。

 エコノミーの分析が正しいとすると、公害問題は、中国にとって宿痾となり、今後とも長く民衆の不満の源泉となり、経済成長の足を引っ張る要因となると考えなければなりません。そして、エコノミーの指摘する通り、環境問題への取り組みは、ボトムアップ方式でなければなりませんが、それは、共産党による独裁体制と最も相容れないことです。他方、環境汚染は生命にもかかわることなので、大衆からの圧力は高まりやすく、環境問題は、中国の体制の行方を予想以上に大きく左右する要因である可能性があります。

 なお、中国に多数の環境NGOが存在していることは、意外と知られていない事実かもしれませんが、中国の民主化を促すルートとして注目すべき存在であると思います。

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