2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月27日

 空母を目標とする場合、最初の実施能力と本格的実施能力を区別するはっきりした境界線はない。中国のASBMのハードウェアの能力は劇的に改良されてきたが、それを支援したり、連結したりするソフトウェアの能力についてはいまだ不透明のままである。

中国は冷戦期のソ連のように全世界規模で軍事的プレゼンスを持とうとはしていない。当面の中国の狙いは近海とその空域を対象として、法規制、安全保障措置、資源管理などの面で、一方的かつ独善的に中国の利益に他国の利益を従属させることである。中国は米国に並ぶ大国として扱われたいのだろうが、大国には大国としての責任が伴うものである。米国としては一方的に譲歩すべきではなく、また中国に現状を変更させる余地を与えてはならない、と論じています。

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 論者エリクソンは、とくに1995-96年の台湾海峡の危機をとりあげ、米の航空母艦派遣の前に、当時の中国はなすすべもなく後退せざるをえなかった屈辱が、その後の中国の軍事力強化、なかんずくASBM開発のきっかけになったと指摘しています。この点は、多くの論者の指摘するところで、多数説と言えます。

 ただし、注目すべき点として、ASBM東風21号の能力は依然として「半透明」であり、ハードウェアの目覚ましい進展に比し、ソフトウェアの能力については推測の域を出ないとしています。

 伝統的大陸国家の中国が、海洋に進出しはじめてから、黄海、東シナ海、南シナ海の「第一列島線」内を自らの「内海」のように扱い、ここに中国の独善的ルールを適用する動きが続いています。さらに、近年、中国は米国との関係を「新しい大国関係」として、米国と並ぶ大国として自らを位置づけようとしています。かつて鄧小平時代に中国は「韜光養晦」(才能を隠すこと)のスローガンのもとに突出した対外活動を戒めましたが、とくに習近平下の中国は、逆に米国に並ぶ大国としての中国を印象付けようとしています。いわゆる「G2」としての土俵設定です。

 「米中の新しい大国関係」という用語を不用意に使用することは、習体制下の中国の独善的行動を受け入れるに等しく、警戒を要します。

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