2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月28日

 蕭氏は、ワシントンで「TPPの自由化基準を満たすには、大規模な経済的オーバーホールの要があろう」と認めた。馬総統もそれに賛成しているように見える。蕭氏が言うように、貿易の拡大が無ければ、台湾は、アジアで最も孤立した国になる危険性がある、と論じています。

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 蕭万長前副総統は、2008年に、日本のマスコミに対して、日台がFTA、EPAを結ぶことが出来れば、両国の経済発展に役立つであろう、と述べたこともある人物です。台湾の貿易自由化の重要性や対外的経済関係で台湾の置かれている立場をよく理解している蕭万長前副総統にリーダーシップを取らせようとしている点を、具体的な動きとして歓迎し、後押ししている社説です。

 馬英九の親中国政策は、当初は、政治的接近をも含んだものでしたが、台湾の民意がそれについて行かないことが分かって、もっぱら経済的接近を中心としてきました。しかし、中国経済に翳りが出た現在、台湾は、それからも離れて、グローバル経済との関係強化を考えるようになってきている状況にあると言え、それが好ましい傾向であることは、このWSJの社説の指摘する通りです。

 台湾の貿易、投資制度は、長い間の政治的孤立と、もっぱら対中貿易、投資関係を考えた中台間の便宜主義によって、国際的な自由化の流れからは遅れていたようです。しかし、台湾は、その民主的政治制度から言っても、先進的な経済から言っても、そして民度の高さから言っても、グローバルな基準を守る能力を十分有していると思います。したがって、この際TPP加入を目指して、経済制度の国際化を図ることは、正しいアプローチと考えられます。

 ただ、長期的には、それが正しい政策であると思いますが、台湾のTPP加入はもとより中国の最も反発するところです。2月11日から行われた初の中台閣僚級会談では、中国側は台湾のTPP参加に前向きな姿勢を示したようですが、それはリップサービスと見るべきで、台湾のTPP参加が現実的なものとなれば、台湾の地位などをめぐり難題を突き付けて来ることは確実と思われます。そして、現在のオバマ政権が、中国の意向に逆らってまで、台湾のTPP参加を受け入れるような政策の幅を持っているかどうか大いに疑問です。

 もっとも、米国が、最終的にそれを受諾するのは、行政府でなく、議会であるとすれば、台湾が働きかける余地はあります。しかし、まずそのためには、台湾自身が貿易、投資などの制度の自由化について、自ら決断する必要があります。

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