2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2014年2月27日

ーー北折先生のご専門は社会心理学ですが、迷惑行為は盛んに研究されているのでしょうか?

北折氏:私はもともと「ルールを守る心や破る心」など社会規範からの逸脱行動について興味がありました。大学3年時にゼミに入ったのですが、その時の指導教官が大学に着任したばかりの先生で、社会規範からの逸脱行動は社会心理学ではこれまで研究されていないと教えてくれて、それよりももっと広範な社会的迷惑について研究するようになったんです。

 それまで社会心理学では、主に援助行動の研究が盛んでした。これは1964年に、アメリカで行ったキティ・ジェノヴィーズ事件がきっかけでした。この事件は、マンションの真ん中にある広場で女性が刺され殺害されました。ところが、マンションの住人が、事件を目撃し気がついていたにもかかわらず、誰も警察に通報しなかったのです。目撃した住人は、まわりの家の人たちが誰も通報しないので自分もしなかった、怖くて関わりたくなくて通報しなかった、などと言ったそうです。これは社会心理学では傍観者効果と言われています。

 ただ、私の指導教官は、前任校で卒論のテーマに「援助行動」を取り上げる学生がいたときに、「他人を援助するより、他人に迷惑をかけないことの方が先決だ」と、教員目線で説教じみたことをいっていたそうで(笑)、いつか迷惑行為にスポットを当てた研究をやろうと思っていたそうです。私がそれに乗った形ですね。

ーー迷惑行為を防止するにはどのような手段が有効でしょうか?

北折氏:人間は恥ずかしいと感じる行動を基本的にしません。ですから、恥ずかしいと思わせることがひとつのキーワードではないでしょうか。本書でも触れましたが、暴走族のことを福岡県警や愛知県警が「珍走団」と命名し、恥ずかしい行為としてレッテルを貼っています。

 迷惑行為の防止についてはまだまだ途上なので、これから研究をもっと進めていきたいところです。

北折充隆(きたおり・みつたか)
1996年、名古屋大学教育学部教育心理学科卒業。2002年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻博士課程後期課程修了。現在、金城学院大学人間科学部多元心理学科准教授。博士(教育心理学)。著書に、『社会規範からの逸脱行動に関する心理的研究』(風間書房)、『自分で作る調査マニュアル 書き込み式卒論質問紙調査解説』(ナカニシヤ出版)、『社会的迷惑の心理学』(共著、ナカニシヤ出版)がある。


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