うつ病蔓延時代への処方箋

2014年3月4日

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――産業医は会社側であり、面談した内容は人事に伝えられると思ってしまいますが。

矢島:会社と産業医はイコールの関係ではありません。むしろ休職満了退職の阻止や、再休職の際にもう少し、という社員のため逆に会社へ頭を下げることも少なくありません。産業医は専門家として、会社と社員の間で中立な存在です。これが基本です。しかし、確かに実際には会社から雇われるわけで、会社側の人間として見られても仕方ないでしょう。ただ、産業医は社員との信頼関係をもてなければサポートは無理です。医師としての守秘義務もあり、社員には必ず了承を取ったうえで会社に伝えていい内容のみを伝えています。カルテを見たい、という会社もありますが、もちろんお断りします。カルテを人事部長が見ているなどと思ったら誰も会社でデリケートな悩みを相談などしてくれません。

若者に多い仕事への意識変化

―― うつ病が増えている要因をどのように見ていますか。

矢島:職場うつや不安障害をはじめとしたメンタル疾患が増えていることは、現場で実感しています。とくに中小企業や新興企業では、以前だとメンタルやストレス疾患で病むと会社を辞めていた方が多いと思います。そのような事実を会社は把握できていないことがあります。現在はうつ病の知識が社会的に広がったこともあり、カミングアウトできる社会環境ができてきました。また「心療内科」というネーミングのライトさから、やや気楽に受診できるようになったこと、休職という権利の存在も世に大きく広まったことなどもあると思います。

 最低限の人数で高い生産性を求められる現場では、疲弊していく社員は後を絶ちませんし、終身雇用が崩れたことによる不安からくるメンタル不調も中年期以降の社員にはよく見られます。また、システム開発のSEやシフト勤務など深夜作業により睡眠覚醒リズム障害でメンタル疾患に陥るケースや、仕事への意識の変化、つまり生活のために仕事をする気がない、自己実現のためになる仕事しかしない、という考え方をする若者が増えていることも要因としてあげられます。

――面談を通して気が付く変化などはありますか。

矢島:以前は、メランコリー親和型や執着性格など、病前性格が特徴とされる内因性うつ病がメインで、中年期以降の人が多かったのですが、最近は「現代型」「新型」といわれるうつ症状の若手社員が増えています。他者配慮に乏しい、自己中心的、他責的、他罰的で漠然とした万能感を保持したまま回避行動をとるなど、全般的にストレス耐性や葛藤への弱さが目立ちます。

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