ベテラン経済記者の眼

2014年3月10日

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 最近の経済ニュースの中で、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に関する報道ほど前進感や達成感が感じられないニュースはなかった。2月17日から25日にかけてシンガポールで行われた首席交渉官会合と閣僚会合には大きな注目が集まり、多くの日本のメディアが取材したが、結局合意にはいたらず、報道としても非常に難しいものになった。

各紙「日米の意見の隔たり」を強調

 2月26日付の読売新聞は1面トップで「TPP長期化必至 次回日程も未定」とした。毎日新聞も「TPP進路見えず」とトップで報じた。他の新聞も産経新聞は「大筋合意再び断念」、日経新聞は「TPP、目標明示せず 関税なお隔たり」、東京新聞は「TPP暗礁」と1面で大扱いした。主要紙で唯一、朝日新聞は合意せずニュース価値が薄いとみたのか、1面からはずし、2面で「日米、TPP平行線」と展開した。

 各紙とも共通していた内容は、日米の意見の隔たりが大きく歩み寄れなかったという点だった。関税に関する協議で、甘利TPP担当相とカウンターパートの米通商代表部(USTR)のフロマン代表の意見が最後までかみあわなかった。このあたりの雰囲気を最も鮮明に伝えていたのが毎日新聞だ。毎日は日米交渉の雰囲気について「22日の甘利氏とフロマン氏の会談は、言い分を応酬するだけの『けんか別れ』の状態で、疲れ切った甘利氏は食事も残すほどだった。24日の再会談も笑顔で対面するのが精いっぱい」と両者のとげとげしい雰囲気を伝えた。読売も「24日の再会談では恒例の握手も交わさず」と伝えていた。

 通商交渉の過程で、日米関係がぎくしゃくするのは今に始まったことではない。強硬に譲歩を迫る米国流の交渉スタイルは、過去、何度もあつれきを生んできた。東京新聞は、1980年代の牛肉・オレンジ交渉までさかのぼって、ごり押しが目立つ米国の交渉姿勢を批判した。産経新聞は、日本に強く要求する一方で、全体の交渉をまとめようと努力しない、つまり譲歩しない米国の姿勢について、「フロマン氏の『剛腕』があだになり交渉の硬直化を招いている」と批判した。

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