World Energy Watch

2014年3月12日

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ロシアの地政学を変える可能性がある
「シェール革命」

 日本では、米国からのシェールガス輸出により天然ガス価格が下落するとの期待がかなりあるようだ。欧州も米国のシェールガス輸出に期待をしている。米国のLNG輸出プロジェクトはガルフと呼ばれるメキシコ湾岸及び東海岸に多いことから、欧州ではLNG輸出はパナマ運河を経由するアジアより欧州向けが有利との期待も高い。さらに天然ガス価格が下落するとの期待もある。

 これに冷や水を浴びせたのは、ロイヤル・ダッチ・シェル石油のピーター・ヴォーサーCEOだ。「英国では天然ガス、電気料金が上昇しているが、米国のシェールガスが輸入されるようになれば、英国のエネルギーコストが下落するとの期待は間違いであり、シェールガスが安く欧州に輸入されるというのは神話だ」と明確に発言している。

 シェールガスの輸出コストを積み上げれば、今の欧州の天然ガス価格と殆ど差がなくなるというのがその根拠だ。シェールガス輸入による天然ガス価格下落の期待は日本でもあるが、欧州と同じく価格面では現状と大きな差はないだろう。

 しかし、欧州も日本もロシアに対する牽制材料としては米国からの天然ガス輸入は大きなインパクトを与える可能性がある。中央アジアからの欧州向け輸出の実質的な妨害をするロシアも米国からの輸出を妨害することはできない。供給源の多様化以上の意味があるだろう。さらに、欧州の一部の国でもシェールガスの生産が開始される見込みだ。シェール革命は中近東の地政学を変えると言われることが多いが、ロシアの地政学にも影響を及ぼす可能性がある。

ウクライナを取り巻く米欧露の関係

 米国はブッシュ大統領の時代に、ロシアは他国に影響を与える道具にエネルギーを使っていると非難し、EUにロシア依存度を下げるように要請していた。依存度は多少下がったものの、EUのエネルギー供給におけるロシアの地位は依然として高いままだ。

 一方、ロシアもエネルギー輸出収入の大半を欧州に依存しており、欧州が供給源の分散を大きく進めると自国の経済が成り立たなくなる。EUとロシアのエネルギーを巡る現在の関係は、持ちつ持たれつだ。

 欧州では天然ガス価格の下落が続いていたことと石炭消費が増えていたことから、この冬の始まりの時点では天然ガスの備蓄は少なかった。この冬欧州は暖冬だ。あまり備蓄は減っていない。ただ、ハンガリー、ブルガリアなど東側の国は備蓄を殆ど持っておらず、ウクライナ経由の供給が途絶すると問題があると報道されているが、大きな危機にはならないとみられている。また、ウクライナをバイパスするノードストリームも完成しており、06年、09年の紛争時ほどの影響はEUにもない。

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