2024年4月25日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2014年3月18日

 アラスカの鮭業界が経費負担の問題で、MSCマークの更新を2012年でやめるとした際、ウォールマート(米国)が扱いをやめるといったことが大きな問題となりました(2014年に入り解決)。日本でもアラスカの紅鮭がお馴染みですが「売れている、売れていない」ということではなく、きちんとした資源管理のもとで獲られた魚かどうかで、「売る、売らない」をスーパーが決めるのです。現在の日本では考えられないことかと思いますが、これが世界の潮流であり、今後その傾向は強まっていくでしょう。

「Seafood Smart」シールを第一歩に

 MSCのような水産エコラベルを、現在の日本のクロマグロの資源管理で取得するのは容易ではないと思います。また、水産庁が「メジマグロを食べないで」と言っても、消費者が店に並んでいるマグロが、未成魚がどうかは簡単にわかるものではありません。そこで日本の消費者や流通業者でできることは何か、考えて始まったのが、東京・築地のマグロ仲卸業者「鈴与」社長でNPO魚食スペシャリストを運営する生田與克さんらが考案した「Seafood Smart」です。これは、水産庁が発表した日本近海の資源調査を基に、生田さんらが「持続可能な資源」とみなした魚にしるしを貼って、消費者の判断の目安にしてもらう試みです。(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/business/20140218-OYT8T00688.htm)。

 水産庁が昨年「メジマグロを食べないで」と呼びかけた、クロマグロの子供のような本来、資源持続性のことを考えたら、獲ったり食べたりするべきではない魚には、緑色のSeafood Smartシールは貼られません。この試みの特徴は、大掛かりな調査や管理、そして費用を伴わず、売り側も買う側も主体的に参加できることにあります。

 日本では約350種類の漁業対象魚種に対して、わずか7種類のTAC(漁獲枠・漁獲可能量)しか設定されていせんが(「漁業 日本のTACはなぜ7魚種しかない?『科学的知見が十分でない』というのは本当か」)、Seafood Smartは国が動かなくても民間レベルで自主的にできる取組みです。売り手においても、供給を受けた魚が、このまま食べ続けても資源は大丈夫なのかどうかを知ることは、重要なことです。

 食べ続けてはいけない魚は売り場に置かれないということになれば、漁師は小さい魚を獲っても売れない、もしくは価格が極端に安くなってしまいます。大きくなっても価値が上がらない魚(カタクチイワシ、イカナゴ等)は別にして、餌用にしてはいけないというルールが必要ですが、本来獲ってはいけないような価値が低い小さな魚は獲らなくなっていくでしょう。既に資源管理で先行している欧米のスーパーと同様の取り組みがすぐには難しいのなら、せめて漁獲したら資源状態を悪化させてしまう子供の魚は店で売らない、そのために当店では緑のSeafood Smartのシールを貼って資源管理を考えていますというメッセージを消費者に伝え、消費者もシールが貼られた魚を買うようにするだけでも、大きな変化を起こす一助となっていくことでしょう。

 消費者にできることの一つは、資源管理されていない魚は買わないということ、そしてどのような管理をしているかに関する情報を、これからのために主体的に求めていくことです。そしてそれは可能になってきています。


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