世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月2日

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 要するに、中国は東シナ海、南シナ海で危機を作り出すことにより、中期的な戦略利益よりも短期的な国内での利益を優先している。独裁は定義上被統治者の同意を必要としないが、中国の独裁者は公衆の賛同を得ようとしている。

 アメリカ人は中国が自由化し、世論に耳を貸すようになれば、より無害になると考えてきたが、世論に従うほど、政権の行動は民族主義的になりそうである、と論じています。

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 このカプランの論説は、中国の対外強硬姿勢は習近平政権の国内権力基盤を強固にするために取られている、というよく言われる説を述べたものです。しかし、政権基盤がしっかりすれば、対外的により穏健になるのか、疑問の余地があります。習近平が本当は対外的に強硬な姿勢を取りたくないが、民族主義的感情に配慮しているという説も同様です。習近平が言う中華民族の夢の実現など、民族主義的スローガン以外の何ものでもありませんが、それが習近平の本心なのか方便なのか、知る由もありません。

 確かに、静かに時を稼ぎ、力関係が中国に有利になるまで、待った方が中国にとり有利ではないかと言う判断は常識的です。しかし、中国はもうすでに力関係は十分に有利になっており、他の国に圧力を加えても大した反発は出来ない、と考えている可能性もあります。

 いずれにせよ、習近平政権が世論に迎合する必要上、今の挑発をしているのかどうか、我々として確定的に知ることはできないので、あまり決めつけて対応すると、間違いにつながりかねません。

 かつてスターリンは「決して相手の立場に立って物事を考えるな。そういうことをしていると、とんでもない誤りをする」と言いましたが、ちょうどそれがよく当てはまる状況にあります。すなわち、中国指導部の動機をあれこれ詮索するよりも、中国の実際の行動に、行動をもって反応していく方がより重要です。

 カプランは、中国は挑発の個所をフィリピンとの紛争から日本との紛争に移すなどしており、その挑発は国内世論対策であるから、中国は挑発的な行為を時宜に応じてやめる、と判断していますが、いかにも甘い判断です。到底、これをベースに政策を考えることなどできません。カプランの説は、せいぜい、検証されるべき仮説の一つと捉えるべきものと思います。

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