北朝鮮を非難する国連人権報告書と
中国の「2つの懸念」


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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2月22-28日号の英エコノミスト誌は、国連人権報告書が北朝鮮の「言語に絶する」人権侵害を非難すると共に、中国の一部加担を示唆している、と報じています。

 すなわち、2月17日、国連特別委員会が北朝鮮の人権侵害に関する報告書を発表した。報告書は、脱北者や難民など300名以上の証言に基づき、政治犯、国外逃亡者、キリスト教徒などの処刑・奴隷化・飢餓・強姦・強制堕胎等、北の組織的な人権侵害の様子を詳細かつ多岐にわたって描いている。

 報告書は糾弾の激しさにおいても際立ち、北の人権侵害をハーグの国際刑事裁判所に告発するよう国連に要請している。Michael Kirby委員長は、金政権は残虐さでナチス・ドイツに匹敵すると述べ、人道に対する罪に問われるかもしれない、と警告する書簡を金正恩に送った。勿論、北朝鮮側は国連の非難を頭から否定したが、報告書は北朝鮮に対する国際社会の姿勢が変わる契機となるかもしれない。

 報告書は、国際社会は北朝鮮の「人々を守る責任を引き受けなければならない」とも言っている。そのため、再開されれば、6カ国協議においても金政権の残虐性に触れないわけにはいかなくなった。また、米国政府も他の問題を人権問題に優先させることはできなくなった、と専門家は指摘する。

 さらに、特筆すべきこととして、報告書は中国も批判している。中国の石油・食糧支援が金政権の支えになっていることや、中国が捕えた難民を投獄・拷問・処刑が待つ北朝鮮に強制送還していることはよく知られている。

 中国は北朝鮮の人権侵害が暴かれるのを許せば、いずれ中国のことも暴かれると恐れており、そのため、中国も報告書を「理不尽な批判」とはねつけたが、内心は不安を感じているだろう。

 他方、この件については望みがなくはない。2012年には、国連で中国が棄権して、北朝鮮の人権侵害に対する非難決議が可決されている。中国も、非人道的政権を支援するのは中国にとって拙いということはよくわかっている。

 それに、中国は北朝鮮が叩かれるのを密かに喜んでいるかもしれない。近年、中国は、核実験の強行など、好戦性を強める北朝鮮に苛立ちを募らせてきたが、そこへもってきて、中朝の仲介役だった張成沢の突然の処刑に神経を逆撫でされた。そのためか、中国の検閲当局は人権報告書の一部がソーシャル・メディアで議論されるのを許している。

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