2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月3日

 もっとも中国には大きな心配が2つある。1つは、国内で政府の北朝鮮支持への批判が強まるかもしれないことで、実際、ソーシャル・メディアにはそうした兆候が現れ始めている。しかし、指導部は、この問題を北朝鮮に突きつければ、金は態度を硬化、より好戦的になりかねないと懸念している。

 もう1つは、難民の強制送還を止めろという国際社会からの圧力が増すかもしれないことだ。しかし、送還を止めれば、大量の難民が中国の国境地帯に押し寄せ、今度はそれが外国の干渉と北朝鮮の怒りを招き、朝鮮半島情勢が不安定化しかねないと指導部は恐れている、と報じています。

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 北朝鮮の惨憺たる人権侵害は、正面から取り上げれば、衝撃的文書になることは、作成される前から分かっています。それが今回新たに、国連の特別委員会が詳細に報告したものです。

 それが国際情勢に及ぼす影響については、この論説は、まず、北朝鮮との関係において、6カ国協議ではこれを取り上げざるを得ないであろうと言っています。それならば、6カ国協議が開かれる見通しはさらに遠のくことになります。

 でも、それで構わないでしょう。6カ国協議は、端的に言えば、従来、協議の内容というよりも、北朝鮮を出席させるためだけに、中国の斡旋を必要とし、それが中国の影響力を高めているだけの会議だったと言えます。

 次に、この論説は、この報告が中国に対して与える影響を論じていますが、その内容はその通りです。

 すなわち、中国と北朝鮮との関係維持について、国内の反対が高まると、中国にとって戦略的重要性のある北朝鮮との関係を今まで通り維持するのが難しくなります。また、難民の送還をやめると、難民が中国に殺到する恐れもあります。何よりも、中国にとって困るのは、人権侵害批判が再び国際社会で高まり、中国自身も人権批判を受けることになる可能性です。

 以上を考えますと、日本としては、今回の特別委員会の報告の内容を支持し、北朝鮮の人権侵害――日本はとっくに知っている事実ではありますが――を、糾弾する立場を取るべきでしょう。

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