2024年4月19日(金)

喧嘩の作法

2014年4月29日

 現役の日本人社員から意図的な漏えいが起きるのは、例えば金銭的なストレス、昇進や評価への不満、技術への強すぎる自負、組織内での孤立などがある場合に外部から誘われたときである。誘う手口は心理を巧妙についたものであることが海外の裁判例などで分かる。社員の不満は人事管理で把握すれば事前にある程度解消できる。しかし秘密情報防衛のためには、社員への誘いが現実に世界中で起きており、その手口がどのようなものかを認識させ注意させることが役に立つ。これは企業の重要情報にアクセスできる社員全員が対象になる。

 日本特許出願による技術情報の開示も注意が必要である。特許は独占権と引き換えに公開される制度であるが、日本でのみ公開ということではなく全世界に向けての公開になる。公開により技術情報は出願しなかった国で自由に使われ、さらに出願しなかった国でのビジネスを奪われることにつながる。

 1件の出願の背景に数千万円の研究開発投資があることを考えるとこれは気前が良すぎる。発明が生まれたら何でも出願すればいいということは全くない。市場の商品をいくら分析しても分からないような材料成分や加工方法などは、出願により全世界に教えてしまう結果になるし、逆に他社の商品を分析しても侵害しているかどうか分からないので権利行使もできない。

 そこで出願内容をどう構成するか、また出願国を後で指定して新興国企業の進出をどう阻止するか、業種や競争の状況、グローバル企業や中小企業、それぞれに応じた様々な戦略がある。新興国企業が日本企業を狙っていることは事実である。日本企業は秘密情報を防衛する強い意志をもち、まずは自らの隙をなくすことである。

◆WEDGE2014年4月号より









 

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