2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2009年5月20日

 「工業の町」として栄えてきた群馬県大泉町。90年以降、南米日系人が急増し、総人口に占める外国人比率が約16%と全国一の町である。同町広報国際課の加藤博惠氏は言う。「外国人は労働者であると同時に生活者でもある。住民としてどう捉え、どう対応するかが課題だ」

 たとえば、日本語の問題。習熟度は人によってバラバラだが、日本語が分からないため地域住民と些細なことで対立することもあれば、税金や保険などの制度が全く分からずに滞納し続ける人もいる。そのため同町では、外国人登録した労働者に母国語のパンフレットを作成・配布するなど、手厚い行政サービスを提供しているが、「一方で日本語習得への意識と彼らの自立を妨げている不安もある」(加藤氏)という。

 企業の対応もまちまちだ。一部の企業では浜松市内のブラジル人学校に寄付金を出すなどしているが、彼らが生活者として自立するためのコスト負担等は「何もしていない」のが現実だ。それゆえ、それらの負担は末端行政に押し付けられているが、現場から聞こえてくるのは「行政のサービスだけでは足りない」(前出の座波氏)との声だ。

 日系ブラジル人の文化交流活動を行うNPO法人ABCジャパン(神奈川県横浜市)の橋本秀吉理事長は語る。「これまで企業は、日本語ができない外国人を雇っても使い勝手が良かったし、逆に日本語ができなくても働ける環境に日系人も甘えてきた。今後、企業は労働者ではなく人間を受け入れるべきで、そのためには教育や生活支援全般にもっと関与する必要がある」

 「定住者」の在留資格付与に踏み切ったのにも拘らず、社会も企業も本当に受入れる覚悟はなく、コスト負担に本腰を入れているとは考えづらい。そのくせ不況になれば金を出してでも追い返そうとするのが、日本の実態だ。

折衷案でできた技能実習制度

 外国人研修生制度の門戸が大きく開かれたのも同じ90年。当初は日本企業が海外の子会社や関連会社などから人材を受入れ技術を移転する、いわゆる「企業単独型」によるものだったが、この制度だと中小・零細企業では研修生を受入れることが事実上不可能であった。そこで考え出されたのが事業共同組合や商工会議所などが受け入れ団体(1次受入れ機関)となり、傘下の企業(2次受入れ機関)で研修を行わせる、いわゆる「団体管理型」による受入れだ。この団体管理型では、人数制限も緩和され、研修生の受入れが一気に進んだ。ちなみに、07年の民間による受入れの約9割がこの団体管理型となっている。

 さらに93年には技能実習制度が導入された。外国人受入れを要請する業界や所管官庁などが開国論を唱えれば、日本人雇用への影響や治安を懸念する労働省や法務省などは鎖国論を張った。その折衷案として「技能実習制度」が編み出された。


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