チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年4月1日

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 つまり、安倍首相がアジア諸国に対し、「中国からの現実的脅威に対処して結束しよう」と呼びかけて「対中国包囲網」を構築しているのに対し、習主席は「かつてアジア諸国を侵略したのはむしろ日本ではないか」という論理をかざして日本とアジア諸国の分断を図り、「対中国包囲網」を打ち破ろうとしているのである。

 そういう意味では、中国の行う「歴史認識外交」は、反日イデオロギーに囚われすぎる韓国の場合とは違って、むしろ現実の外交戦略遂行のために「歴史」をカードとして利用しようとするものであるが、いずれにしても、歴史問題をもって日本を叩くというのは中韓両国の共通した外交路線となっており、中国にとっての韓国は、アジアにおける「対日共闘」の唯一のパートナーとなるのである。

中国に利用される韓国

 こうした中で、いわば歴史問題をテーマにした「中韓対日共闘」が露骨に演出されたのがすなわち、3月23日にオランダのハーグで行われた中韓首脳会談である。

 韓国大統領府が明らかにしたところでは、習近平国家主席と朴槿恵大統領の会談では、日本の初代総理大臣の伊藤博文を暗殺した安重根の記念館のことが大きな話題の一つとなったという。

 まず習主席は「私が記念館建設を指示した。両国国民の(安重根への)思いを強め、(中韓の)重要な結び付きとなる」と切り出すと、朴大統領が「両国国民から尊敬される安重根義士をしのぶ記念館は、友好協力の象徴になる」と応じた。

 さらに習氏は、日本統治に抵抗した朝鮮人部隊「光復軍」を記念する石碑が近く、部隊の拠点があった中国・西安に完成すると説明した。朴氏は「意義深く思う」と述べたという。

 このように、紛れもなく中国の習主席の主導下において、両国首脳は歴史上の暗殺者の安重根や幻の「朝鮮人光復軍」をもち出して、いわば歴史問題を材料にした「中韓反日共闘」の外交路線を鮮明にしている。その背後には当然、韓国を引きつけて日米韓の参加国連携にくさびを打ち込みながら、東アジア外交において優位に立とうとする中国の思惑があるのであろう。

 しかしそれにしても、21世紀になった今日の中韓両国の首脳会談で、百年以上も前の一暗殺者のことが話題になるのは異様であろう。そのことは逆に、彼らが構築しようとする「反日共闘」というものは、まったく現実の根拠に乏しいものであることを如実に示している。現実の根拠がないからこそ、両国を「反日」に結びつける唯一の連結点はすなわち「歴史」なのである。

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