リベンジポルノ
一筋縄ではいかない法規制の問題


塚越健司 (つかごし・けんじ)  学習院大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』月曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbs.co.jp/radio/dc/clip/)。

サイバー空間の権力論

»最新記事一覧へ

随分と間が空いてしまった本連載ではあるが、前回は昨年多発したTwitter犯罪自慢事件を取り上げた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3179)。内輪のルールで行った悪ふざけが広く世間に拡散したために生じた事件ではあるが、前回も指摘したとおり、こうした悪ふざけは以前から日常的にあった行為であることが予想される。

 インターネットの発展により、内輪発信のつもりが全体に拡散されることに無自覚な事件が多発する一方で、全体に拡散することを最初から意図した事件を今回は扱う。それが、国会でも議論が開始されつつある「リベンジポルノ」である。

問題は山積み
リベンジポルノとは

 リベンジポルノとは、過去に交際していたカップルの一方が、交際期間中に撮影した(撮影に合意したものもあれば、合意を得ずに隠し撮りしたものも含まれる)性的な画像や動画を多くの第三者に晒すことを目的としてネット上にアップする行為である。大抵はカップルが別れた後、元恋人に対する恨みを持った者が復讐(リベンジ)目的で行うものだ。

 画像・動画をアップされた被害者の精神的苦痛は計り知れない。さらに悪質なものだと、加害者が被害者にポルノ削除の代わりに金銭を要求するケースもある。いずれにせよ、元交際相手が意図的に加害者になるという点で、以前ファイル共有ソフト「Winny」等で生じた、意図しない画像流出とは根本的に性質が異なる。

 事件を取り巻く問題は山積みだ。まず、一度アップされた画像は回収不可能という問題である。友人限定のSNS等であればまだ拡散を防げる可能性もあるが、ポルノサイト等の第三者が閲覧可能なサイトにアップされたものは、半永久的に誰かの手に渡ったままとなり、常に世界のどこかのサイトにアップされてしまう怖れがある。

 次に、報道に際しても慎重な態度が求められる。リベンジポルノ犯罪に関する報道は、例え匿名で事件を伝えたとしても、インターネットで検索すれば簡単に当該ファイルにたどり着けてしまう恐れがある。ただでさえ事件によってショックを受けた被害者を、報道が二重に傷つけてしまうのである(したがって、本稿では具体的な事例については言及しない)。訴えを起こしたりその報道によって逆に事件を有名にしてしまうことを、実際にそうした被害に陥ったアメリカの有名芸能人の名前を取って「ストライサンド効果」というが、こうした問題にマスメディアが敏感にならなければ、二次被害を恐れて被害者が声を挙げることができなくなってしまう。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「サイバー空間の権力論」

著者

塚越健司(つかごし・けんじ)

学習院大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』月曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbs.co.jp/radio/dc/clip/)。

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍