2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2014年4月10日

 しかし、再処理技術のイノベーションにより将来核拡散に繋がらない方法での再処理が可能となることも考えられ、さらに、日本でも言われているように、再処理によって使用済み燃料を減容し最終処分がしやすくなるという利点もありうるので、現時点でアプリオリに再処理禁止を協定で明記しておくのは得策ではなく、必要でもない。いずれにせよ、ベトナムやトルコが仮に再処理を希望するとしても、それは20、30年先のことで、将来諸々の状況や要因を考慮して合理的に判断するべきものである。

 他方、アラブ首長国連邦(UAE)のように最初から自前の再処理、濃縮を断念している国もある。米国は、UAE方式をゴールド・スタンダード(モデル協定)にしたい意向で、日UAE協定(今国会で審議中)もこの方式を踏襲している。

再処理をめぐる不平等性

 当然のことながら、新興国にもそれぞれの事情や計画があるから一律に論ずることはできない。UAEのように自発的に再処理・濃縮の権利を放棄する場合は問題ないが、相手国がその権利を熱望するときに、供給国の政策として一方的に再処理禁止を押し付けるのは必ずしも賢明ではないと思われる。現時点であまり厳しい規制をかけると、新興国は日本や米国を避け、もっと規制の「甘い」国(ロシア、中国など)との原子力協力に走る惧れが多分にあるが、それは、単にビジネスチャンスを失うというだけでなく、核不拡散のための国際秩序維持というより高い視点からみて決して望ましいことではない。

 いずれにせよ、このように国によって差別が付き、不公平が生ずる根源的な原因は、核不拡散条約(NPT)で明記されている「原子力平和利用の権利」(第4条)の中身が曖昧なためである。すなわち、「本条約は、全ての締約国の原子力の平和利用のための権利に影響を及ぼすものではなく、全ての締約国は、原子力の平和的利用のため、設備、資材及び情報の交換を容易にすることを約束し、その交換に参加する権利を有する」とあるが、実態としてこの条約ができた1960年代には、各国の関心事は原子炉(主に軽水炉)による発電の技術であった。再処理・濃縮の技術は米露など一握りの先進国しか持っていなかった。しかし、その後原子力発電が進み、現在ではいくつかの先進国(日本を含む)がこの技術を持っており、新興国の中でも、将来大規模な原子力発電を計画している国の場合、再処理の権利を確保しておきたいと考えるのは自然だろう。

 元々NPTには「核兵器を持ってもよい国」(5大国)と「核兵器を持ってはいけない国」(5大国以外のすべての国)の差別があり、本質的に不平等条約と言われる所以であるが、それに加えて、NPT加盟の新興国や開発途上国の間には、「もう一つの差別」を指摘する声が強い。すなわち「再処理をしてもよい国」(5大国のほか日本や一部のユーラトム加盟国)と「再処理をしてはいけない国」の差別で、これに対する不満は年々大きくなってきている。


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