2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2009年5月26日

 今検討の俎上にあがっているのは、この国債を使って余剰貯蓄を国庫に吸収し、社会保障や雇用対策の財源に振り向けるという案だ。資金の使い道まで考えれば、むしろ「金持ち以外」の優遇策ともいえるのだが、「金持ち」から調達するというだけで議論が止まってしまうのだ。

 消費税の議論も、同じ袋小路にはまっている。「月収が10万円の人も100万円の人も、1万円の買い物をした時に支払う消費税は同じ500円。低所得者ほど税負担が重い」という「逆進性」の主張は、形を変えた金持ち優遇批判ともいえる。

 だが、政府・与党は今後の税率引き上げによる税収増は、すべて社会保障の財源にすることを決めている。使い道まで考えれば、消費税の「逆進性」など、もう存在しないのだ。消費税を引き上げて年金財政を安定させなければ、老後への不安は消えず、高齢者は余剰貯蓄を使おうとしない。これでは困ると講じた減税策も、「金持ち優遇」批判が阻んでしまう。まさに八方塞がりとは、このことだ。

 米国でも、政府が打ち出した住宅対策について「身の丈に合わないローンを組んだ人を助けるために、なぜ税金を使うのか」という批判が出ている。だが、オバマ大統領は「住宅価格の下落に歯止めをかけることは国民全体の利益になる」と、反対論を一蹴している。

 公正公平の筋論を貫くか、国民全体の利益を優先するか。いずれにしても、「金持ち優遇だ」の一言で政策をねじ曲げてしまうのは、そろそろ終わりにしてはどうか。


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