中国メディアは何を報じているか

2014年4月11日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

(ウワサ2)「バス、鉄道が運転を停止し、陳情者を阻止した」
事件発生後、『バスや鉄道が運転を停止した』『ネットワークへの接続が中断された』との情報を流すことで、市民が広州市に行って(広東省当局に)陳情しようとするのを妨害しているとのウワサがネット上に流れた。
これについて、鉄道会社の広鉄集団、バス管理の広州市交通員会は運転が正常だったと回答した。また通信会社のチャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコムもネットワークが遮断されたとのウワサに対し、正常運営だったと回答した。

(ウワサ3)「戦車が市内に進入し、市民が『乱暴された』」
ネット上に、茂名のメインロードを戦車が走る写真や街で流血して倒れた市民の写真などが掲載された。
これについては、数年前に訓練で公道を戦車が走った時の写真や、2012年2月2日の浙江省のウェブサイトに掲載された男女の個人的な争いでの流血写真、過去の集団抗議行動や反日デモの時の写真だったことが明らかになった。

地方政府の失政を非難するこれまでの論調

 PX反対運動について『人民日報』はこれまで運動の経緯を事細かく報じてはこなかったが、論説を通じてその意味するところを報じてきた。例えば、2013年5月7日付に掲載された熊建の論説「公開透明、さらに利益のバランスをとらなければならない」は次のように述べている。

「これらの事件は現在の重大な化学工業プロジェクトの決定プロセスが完全ではないこと、社会参加と公衆の公聴会の地位が確立していないこと、経済的な補償が不足していることなどの問題を反映している」

「重大な化学工業プロジェクトの影響を直接受ける周辺住民との利害調整を十分行い、住民に十分な補償を与えてこそ、各方面の利益を均衡させ、プロジェクトを平穏に着手させることができる」

 これまで経済発展を重視して、住民に配慮せず、PXプロジェクトを誘致する地方政府を非難し、住民との協調を促す内容の論説を掲載してきた。また、中央当局が住民の反対運動が政策変更をもたらしたことを隠さなかったことは、共産党政権下で民衆の政治参加が実現しているという政治的寛容性を内外にアピールすることも目的にしていたと考えられる。

 今回の茂名のケースでも『人民日報』は4月2日付で、「さらにきめ細かい工作でPXへの不安を解消する」と題する論説を掲載し、地元政府が住民に対しPXが危険な物質ではないことを理解してもらう努力が足りないことを問題視している。

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