2024年4月26日(金)

World Energy Watch

2014年4月15日

世界にとってのリスクと日本の貢献

 貧困、格差拡大、気候変動、私たちの世界には様々なリスクがある。全てのリスクを同時に解決できるわけではないので、優先順位をつけ取り組まざるを得ない。気候変動は大きなリスクに違いないが、貧困、格差拡大も世界にとっての大きなリスクだ。

 気候変動と貧困は時として、対立する関係にもなる。途上国で貧困層のために安いエネルギーとして石炭による発電を試みると、温室効果ガスの排出増になり、気候変動のリスクを高める。先進国で再生可能エネルギーによる発電を増やすと、温室効果ガスの排出減少には寄与するが、電気料金の上昇を招き、ドイツでみられるように、貧困層には大きな打撃となる。

 複雑に絡み合う問題を一度に解決する妙案はない。ただ、日本は技術により世界の貧困と温暖化問題に貢献することが可能だ。しかし日本の技術力は分野によって濃淡があり、さらなる発展が期待される。これから温暖化対策として有効な技術の一つはCCSと呼ばれる二酸化炭素の補足と貯留だが、既に欧州、米国では実証試験、商業化の段階にあるのに対して、日本ではやっと小規模の実証試験の段階だ。石炭のガス化により発電効率を高めるIGCCも米国GEは98年から実証プラントを運転し、商業プラントも建設した。この技術も日本ではこれから商業化の段階だ。

 また、これからの再生可能エネルギーの主流になる洋上風力発電設備のシェアはドイツのシーメンスが世界シェアの90%近くを持ち、残りもドイツ企業だ。洋上風力からの直流高圧送電線の世界シェアもスイスABB、フランス・アレバ、ドイツ・シーメンスが世界シェアの80%を保有している。

 日本も世界で活かせる技術を持っている。一つは省エネ、節電の分野だ。輸入エネルギーに依存し、コストが高かった日本では、この技術が発達した。日本メーカーは蓄電池でも、まだ世界をリードしている。再生可能エネルギーの導入には欠かせない技術になる。さらに、これから世界で500基以上の建設が予定されている原子力発電所関連の技術も日本企業が保有している。

 貧困問題と同時に気候変動問題に取り組むには、技術が欠かせない。日本が持つ技術をさらに開発し、途上国に提供する方策を考える必要がある。


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