2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月30日

 上記の二つの選択肢が何れも米国にとって最悪である以上、オバマ政権が明確なメッセージを発信できない理由は理解できる。しかし、米国にとって、日本の言う尖閣諸島、中国の言う釣魚島の為に戦う意味は無い。他方、日米同盟、地域における米国の指導的役割並びにアジア全体の現状を維持することは、米国の死活的利益である。

 第三の道がある。アジアに新たな戦略体制を構築すべきである。中国にかなりの指導権を引き渡しつつも、米国は中国の力を中和し制限すること――特に、紛争解決のために武力の行使ないし武力による威嚇は行わないとの最重要の規範の尊重を含む――の為に関与を続ける選択である。

 最終的には、この新たな規範が如何なる同盟関係よりも重要である。この規範は、1945年以来の米国の国際秩序感の基礎にあるものである。米国は中国が日米同盟に挑戦することよりも、東シナ海で、この規範に挑戦することを懸念すべきである。米国はこの規範を守る為に中国と戦う用意を持たねばならない。

 米国は、中国が武力の行使や武力による威嚇を放棄するのであれば、中国により大きな地域的主導権を与える為の新たな安全保障体制の構築につき交渉の用意を示すべきである。中国が武力行使の脅迫を続ける限り、米国は戦う決意であることも明示すべきである。

 地域におけるこのようなパワーシェアリングがどのように機能するかは解らないが中国及び地域諸国との交渉で決まっていくこととなろう。最良の歴史的ひな型は、1914年まで100年間に亘り平和を維持した欧州協調体制である。当時の欧州同様、今日のアジアは、何れの国も特別の指導的役割を持つべきでなく、全ての大国が他国に優越することを求めず、全ての重要な地域紛争は対等な立場で交渉により解決できる体制を必要としている。

 多くのギブ・アンド・テイクが必要となろう。例えば、米国は中国が最終的に台湾に主権を主張することを容認し、その代償に、中国が南シナ海全体に対する領有権の主張は出来ないことを認めると言った取引である。


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