復活のキーワード

2014年6月2日

»著者プロフィール
閉じる

磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 訪日外国人を2000万人にしようと思うと大きなネックがある。旅館やホテルなどの数が圧倒的に足りないのだ。特に人気の観光地は春の桜のシーズンなどホテルを取るのは至難だ。海外ではまだ知名度が低い地方の観光地では稼働率が上がっていないところもあるが、総じてホテルは不足気味だ。

 ホテルを新規オープンする動きも増えてはいるが、ハコモノを増やすことに抵抗を感じている企業が多い。地方の観光産業はバブル期の需要増に合わせて巨大ホテルを建設し、その後、低稼働率に苦しんだところが多いからだ。今回は同じ轍を踏まないようにしようと考える経営者がいても不思議ではない。つまり、需要は急増しているが、ハコモノ投資を増やす従来の日本型の行動には今のところなっていないのだ。

 2番目と3番目を合わせた答えは、需要増に対して新規の供給を増やすのではなく、品質を上げて価格を引き上げる戦略を取ることだ。外国人が求める、高級でも日本的な趣のあるものを増やしていく。つまり、「良いものを高く売る」戦略への転換だ。訪日外国人の消費増をきっかけに、安過ぎたサービス産業の価格を引き上げることができるだろう。ただし、ポイントは従来よりも質を上げること、そして日本の文化とのつながりを強調することだ。外国人主導内需をターゲットにした高付加価値化の実現である。

ホテルの平均客室料金が2万8895円のメキシコ・カンクン
(写真・アフロ)

 それでは日本人が高くて買えなくなる、という批判も出そうだが、そんなことはない。サービス産業の賃金は総じて低い。収益性が改善することで賃金が上昇すれば、日本経済全体への波及効果は大きい。

 オリンピック以降も訪日外国人が増え続けると思う企業は新規投資をすればよい。だが、先行き一旦は減るとみれば、過剰投資は厳禁だ。それをせずに2000万人の外国人の需要を賄うには工夫がいるだろう。ホテルを新規に建てるのではなく、古い民家を活用したり、個人所有の建物を短期滞在に使ったりするのも手だ。

 こうした工夫はこれまでは様々な国の規制でできなかったが、安倍内閣では国家戦略特区を突破口に規制緩和に踏み切ろうとしている。

 高度経済成長期、日本企業の哲学は「良いものをより安く」だった。だが、豊かになりモノが満ち足りた今となっては「良いものをいかに高く売るか」が企業にとって大切になる。

◆WEDGE2014年5月号より









 

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

関連記事

新着記事

»もっと見る