ベテラン経済記者の眼

2014年5月1日

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 嵐のようなオバマ米大統領の日本訪問の日程が終わり、次の訪問国、韓国へと旅立った当日の4月25日の夕刊の見出しをみて驚いた読者は多かったに違いない。大統領の滞在中も延々と交渉が続いていたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の報道について、朝日新聞が「TPP大筋合意見送り」、毎日新聞が「日米TPP合意至らず」、日本経済新聞が「TPP、日米合意先送り、全体交渉に影響必至」といった内容で報道している中、読売新聞だけは「日米TPP実質合意」と大見出しで報じた。

 「合意見送り」と「実質合意」。全く逆の評価である。複数の新聞を読み比べている読者ならずとも「本当はどっちなのか」と問いたい気分になるだろう。この日発表された日米の共同声明では「前進する道筋を特定した」とあったが、これだけではどちらかはっきりとはわかりにくい。

「合意」の根拠を探ろうと…

 TPPに限らず世の中の多くの人や報道機関が注目している事柄で、いちはやく一歩抜け出して誰にも知られていない事実を特報することはニュースの醍醐味であり、記者の実力が問われるところだ。ここでは日頃の取材力とニュースセンスが問われることになる。

 前日の24日に行われた日米首脳会談を巡っては、尖閣問題で米国が明確にスタンスを示すかわりに、TPPでは米国が日本に妥協を迫ったのではないかという見方も一部に出ているが、TPPは交渉事であり、真相は厚い秘密の壁に包まれている。実はかなりの成果があったのかもしれず、その場合は実質合意と断言できるかもしれない。

 ただ、合意というからには、具体的な数字なり、内容なりで一定の結果を得たということでなければ言い切れないという考え方もあるだろう。コップに半分の水が入っている状況を「半分も入っている」とみるか「まだ半分しかない」とみるかという議論にも似ている。ただ、読売報道がディープなニュースソースの情報をもとに取材し、交渉の状況を完全に把握して書いているとしたら、大変なスクープになるだろう。

 こうした疑問を他のマスコミも同様に抱いたとみられ、それに答えようとする記事が27日付の産経新聞に載っていた。そこでは「公開される情報は乏しい」としながらも、「ベールに包まれたTPP交渉は進展していることは確かなようだ」と指摘した。

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