2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月5日

 誰も新しい冷戦、まして軍事的対決は望まない。ロシアにもパートナーになってもらいたいが、プーチンのもとでは無理なことは明らかである。

 プーチンの挑戦はクリミアやウクライナにとどまらない。彼の行動は冷戦後の秩序全体に対する挑戦であり、なかんずく、どの国とでも提携し、取引をする独立国家の権利に対する挑戦である。

 力による失地回復を黙認することは、欧州、アジア、その他の地域での危機や軍事紛争を助長することになる。東、南シナ海で強引な振る舞いを強めている中国、核の野望を持ち中東で介入を続けるイラン、気まぐれで何をするかわからない北朝鮮は、皆欧州での事態を見ている。これらの国は、シリアでの西側の無気力さを見た。ロシアの最近の侵略に対し、西側が同じような分裂と弱さを見せれば、将来危険な結果を生む恐れがある。

 プーチンの挑戦は西側にとって極めて不都合な時期に行われている。欧州は経済の回復が弱々しく、ロシアとの経済的結びつきが強い。米国は10年以上の戦争を後にして、有権者の間では孤立主義が高まっている。

 従って、力強く行動する必要を説明することは、指導者の責任である。フランクリン・ルーズベルト大統領は「政治家の最大の責務は教育することである」と述べた。プーチンの攻撃的で傲慢な行動に対し、西側指導者は戦略的思考、大胆な指導力、そして冷徹な決意を、いま必要としている、と述べています。

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 欧米がプーチンに対し如何に対処すべきかに関する重要な論説です。

 ゲーツ元長官のプーチン観は極めて厳しいもので、プーチンのロシアは欧米のパートナーとはなれないとしています。

 そして、欧米は、長期的観点から、効果的な経済制裁、対ロ投資の制限、ロシア近隣NATO諸国の軍事力強化、G8からのロシア排除等をすべきであると提案しています。

 問題は、今の欧米にこのようなロシアに対決する政策が実施できるかどうかですが、ゲーツはそのような政策の重要性を米国民に説明し、有権者を教育することが重要であると指摘しています。確かに米国民は長年にわたるイラク、アフガニスタン戦争で嫌気がさし、外国への関与、介入に消極的で、啓蒙を必要としているのでしょうが、その前に欧米の指導者、なかんずく米国の指導者がどの程度ゲーツの危機感を共有できるかが問題です。教育を必要としているのは欧米の指導者なのかもしれません。


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