世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月8日

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 米外交問題評議会のレヴィ上席研究員が、3月25日付フィナンシャル・タイムズ紙で、欧州がロシアの天然ガスカードの効果を低下させるには、米国のシェールガスを輸入するよりも、米国のシェールガス開発のモデルに倣い、欧州でシェールガス開発を進めることが効果的である、と述べています。

 すなわち、欧州のロシアの影響からの解放を助けるために、米国のシェールガスを欧州に輸出すべし、との声が高まっている。欧州は、天然ガスの30%をロシアから輸入している。ロシアに対する懸念は、根本的には正しい。

 しかし、米国の天然ガス輸出は、ロシアの梃子を弱めるには、ほとんど役に立たないであろう。米国の天然ガス輸出ターミナルが建設されるまで1年以上かかるので、現在起こっている危機への対応として、ロシアのガスを代替することは出来ない。これらの設備が完成し稼働し始めたとしても、欧州にシェールガスを送ることは、経済的ではない。船舶での輸送費用を考えれば、ロシアのガスのほうが遥かに安い。欧州市場におけるロシアのシェアはあまり変わららず、米国のガスは主にアジアに流れ込むことになろう。

 ただ、米国のシェールガス輸出がプーチンに痛手を与えないというわけではない。米国による輸出は、欧州のガス価格を押し下げるであろう。それは、米国のガス輸出が認められるべき理由の一つである。しかし、それにより、将来の危機に際して、モスクワに対して決定的に優位に立つことが出来る、と考えるのは、非現実的である。

 むしろ、欧州の政治家は、天然ガスブームの背景にある、米国の成功した政策を真似るべきである。そうすることで、欧州は、ロシアから買うよりも多くのガスを、欧州で生産できるようになる。米国の半分に達するともされる、欧州に存在する莫大な量のシェールガスは、そのほとんどが利用されていない。欧州の多くの国は、シェールガスの生産を禁止している。許可している国々では、税と政府のロイヤルティが、開発を妨げている。

 米国のガスが豊富な州のほとんどは、シェールガス生産を禁止する要求を拒否し、強力な環境保護規定に従った開発を許可した。欧州は、開発と環境のバランスを保った米国に倣うのが賢明であろう。

 米国のシェールガス産業は私有地の上に繁栄しており、地権者は商業的インセンティヴに敏感である。欧州では、鉱業権は一般に公有であり、私有化されそうもない。より根本的な教訓は、政府の政策はガス開発の経済性を損ねないよう注意深くなければならず、地方コミュニティが開発から便益を確実に得られるようにしなければならない、ということである。

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