世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月12日

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 4月5 - 11号の英エコノミスト誌は、経済面でも強大化する中国によって世界における欧州の経済的立場は大きく変わり始めている、と論じています。

 すなわち、3月末、米中首脳が相次いでブリュッセルを訪問し、欧州との貿易関係の深化を求めた。欧州は、自分たちは今も世界の重要勢力だと気を良くしたに違いない。

 もっとも、欧州は米国との貿易協定には熱心だが、中国とのそれにはまだ気乗り薄だ。ただ、中国に対する不安感は薄らいでいる。おそらく欧州はユーロ危機をしのいで自信を得、さらに、低迷する欧州経済を活性化するには中国が必要だと認識したのだろう。

 貿易紛争で中国が柔軟になってきたこともプラスに働いている。ここにきて、長年揉めた中国製太陽光パネルの問題で和解が成立し、また、中国は輸入ワインやポリシリコンについて譲歩し、EUは中国の通信機器メーカーに対するダンピング提訴を取り下げた。背景には、米国が推進するEUや太平洋諸国との自由貿易協定の環から締め出されることへの中国の懸念もあったと思われる。

 しかし、欧州の経済的地位を左右する最大の要因は何と言っても中国経済の強大化だろう。既に中国は米国を抜いて世界最大の貿易国であり、2020年にはEUと肩を並べる。その頃には、中国は世界のGDPに占める割合ではEUを追い越し、ドイツの最大の輸出相手国となり、イタリアとドイツはユーロ諸国よりも新興国・途上国への輸出の方が多くなるだろう。

 こうした変化はいくつかの重大な問題を提起しよう。先ず、欧州がIMFや世界銀行で多数の議席を有することを正当化するのは難しくなる。EUに認められるのは1議席だとの議論が再燃するかもしれない。また、域内貿易より域外との貿易の方が盛んになれば、単一通貨ユーロへのコミットメントが弱まるかもしれない。反面、域外貿易相手国からの非対称の衝撃に対応できるよう、ユーロ諸国はさらに統合を進める必要が出てくるかもしれない。

 そうした中、欧州は、「中国の奇跡も永遠には続かない」と自らを慰める一方、米国との自由貿易協定が成立すれば、当面の世界基準や規則は欧米が決めることになると期待し、中国については、貿易協定の前に、投資協定を介して中国に市場開放の用意があるかどうか試したいと思っている。

 しかし、米国との貿易協定も、政治的障害によって簡単に交渉は中断され得る。実際、オバマ大統領は、欧州の方がより米国を必要としている、欧州の貿易黒字拡大に役立つだけの協定は容認できない、と欧州に釘をさしている。

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