2024年4月20日(土)

復活のキーワード

2014年6月30日

 上田知事は繰り返し「事実を知ることが大事だ」と訴えている。埼玉県のある学校の不登校率が6%に達していることが分かったことで、初めて本気になって有効な対策が打てた。その結果、翌年には不登校率は半分になった、という。このほかにも、犯罪発生率や、学力水準、果ては県税の徴収率など様々なデータを地域別に示すことで、状況の改善に結び付けてきた。事実を示して、問題の所在が分かれば、現場の人たちは改善しようと努力するのだ。

 埼玉県では県出資の民間会社などへの天下りを廃止し、民間人に経営を任せた。その結果、赤字が常態化していたこうした企業は黒字化した。埼玉県の職員数は人口比で全国で最も少ない。全国平均のほぼ半分の人数で行政を賄っている。

 国民や住民からすれば、行政サービスを充実させろ、というのは当然の要求である。だが、そのためにどれぐらいのコストがかかるのかが示されることはほとんどない。公務員は予算を使うのが仕事だから、コスト感覚は生まれない。さらに、行政組織はどんどん自己増殖していく。住民の要求を汲み上げる議員とコスト感覚なく自己増殖する公務員が組み合わされば、当然の帰結として赤字が慢性化し、借金のヤマになるのだ。

 借金が増えて大変だと騒ぐ財務省の官僚たちは、増税には一生懸命だが、支出を減らすためのコストの把握や公表には消極的だ。支出削減に行政サービスを縮小せよという声が強くなれば、それを支えている行政も同時にスリム化しなければならなくなる。そうなれば役所の権限も天下りポストも減っていく。残念ながら数字に弱い政治家は、役所の権益に斬り込んではいけない。

 あなたは、タックス・ペイヤーか、それともタックス・イーターか。前者ならば、もっと税金の使われ方に目を光らせよう。数字は嘘をつかないから、数字を基に理詰めで考えるべきだ。

 もし後者だと感じたら、同じ行政サービスがもっと安くできないか考えよう。官業を民間に移管できれば、タックス・イーターが減り、タックス・ペイヤーが増えることになる。このまま赤字を垂れ流していては、そのツケは国民に回ってくるのだから。

◆WEDGE2014年6月号より









 

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