2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月3日

 宇宙空間における攻撃兵器が、中国の先端サイバー戦争能力と連携して使われるのは疑いない。米国のコンピューター網にサイバー攻撃をかけると同時に衛星を機能不全にすれば、中国は米軍のアジアなどでの運用を阻止することができる。

 宇宙空間軍事利用がアジアの紛争に与える脅威を考えてみると、米国の偵察衛星を機能不全にすれば、政策決定者が、中国の海、空軍が尖閣のような外国領に対し行動を起こすのを事前に察知することができなくなる。米国や同盟国の政策決定を遅らせることで、中国軍は米国に対し既成事実を突きつけ成果を上げることができる。

 趨勢は明らかである。オバマ大統領が軍を縮小し、米国の宇宙での首位を空け渡そうとしているときに、中国は反対の方向に動いている。中国が優位に立つのは時間の問題である。

 米国は世界の技術大国であることを誇りにしているが、宇宙を目指すことについて、他国の方がより明確な考えを持っていれば、米国の優位は次第に失われる、と指摘しています。

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 中国が宇宙空間の軍事利用を進めていることに対する警告です。宇宙空間の軍事利用とは、具体的には衛星の破壊です。米国は民間が気象観測、航空管制などに広く衛星を使っているのみならず、軍事作戦の遂行に衛星通信システムが死活的役割を果たしています。中国がこれらの衛星を破壊すれば、米国経済に壊滅的打撃を与えうるのみならず、米国の軍事作戦の遂行を麻痺させかねません。オ―スリンは、この脅威に対する米国の認識が不十分であると憂慮していますが、米国の認識がオ―スリンの指摘するようであれば、由々しき事態であり、米国は強い危機意識をもって早急に対策を検討する必要があります。米国が宇宙空間で優位を失えば、当然、日本も重大な危険にさらされることになります。

 1957年のソ連初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げ成功で米国は衝撃を受け、宇宙開発でソ連に追いつき追い越すため、全力を挙げました。当時と状況は大きく異なり、中国の宇宙空間の軍事利用は未だ仮定の段階ではありますが、米国政府は、オ―スリンの警告に耳を傾け、宇宙空間での中国の優位を阻止すべく行動する必要があります。米国議会がすでに関連の調査を国防省に要請したとのことであり、議会がイニシアチブをとってオバマ政権を動かすことを期待するのが現実的かもしれません。

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