2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2014年6月3日

 しかし、日本企業の多くが日本型集団主義から個人主義にシフトし始めると、欧米型思考に疑問を抱くようになる。「欧米では、ダイバーシティや多様性といっても、肌の色や性別など目に見えることで判断する傾向がある。でも、日本人は、言葉では表せない内面や心も大事にする。その血肉に染みついた重要なものを忘れてはならない」。女性としての生き方も「50歳になれば女性という感覚から離れるため、従来のアイデンティティを見直す必要がある」と考え、通信課程のある「東京国際仏教塾」に入門。

 仏教に興味を持ったきっかけは、20歳の頃の思い出にある。旅行で訪れた京都の東寺で、僧侶に「あなたは念が強い。自分が変わればものの見方や考え方が変わる」と諭された。当時は反発したその言葉を思い出し、「50歳を前に、もう一度原点に帰ろう」と決意したのが理由だった。もともと信心はなく、同塾は宗派を問わずに学べるのが手軽だった。「(日本人特有の)言葉にできない“暗黙知”は、本を読むだけでは学べない」。1年間の通信講座で、後半の半年間は月1回、天台宗の寺院に通って修行体験もした。

 同塾を修了した後、47歳の時に真言宗の高野山大学大学院の通信課程に入学し、今も研鑽を続けている。

 「密教には有名な曼陀羅の絵があるんですが、あれにはろくでなしも描かれている。同じ多様性でも欧米とは異なる、こういう面が日本人には生きやすいんだと思います」

 1200年前に霊場を開いた空海が密教を説くために示した、大日如来を中心に何百もの仏たちが描かれた曼陀羅図。木村さんは、その教えにこそ探し求めていた答えがあると感じた。

 「様々な人間がいていい」。密教で得たものをコンサルタント業務に生かそうと、50歳の時に、中小企業のメンタルヘルスマネジメントを支援する新規事業を立ち上げた。特に、ケアの行き届きにくい女性従業員らを対象にした社会貢献活動のサロンも開き、密教の呼吸法も伝えている。

 仏教は、この世界のすべては関係性の上に成り立ち、互いに関係し合うと「縁起」を説く。木村さんは「これまでに起こった事は全て必然で、ひとつも無駄はない。これも縁だと思う。働きやすくて生産性の高い、新たな日本型経営を提案していきます」と話す。


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