科学で斬るスポーツ

2014年6月5日

»著者プロフィール
閉じる

玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 しかし、ジャブラニは、開発の狙いとは裏腹にブレ球は多く、扱いにくいという声も少なくなかった。

 この点、ブラズーカは、飛行安定性が増したと言われる。その理由は、パネルを少なくしただけでなく、同じ素材、同じ十字状の形をしたパネルを使っているところにある。ジャブラニは異なる素材、形状のパネルをつなぎ合わせたため、空気の流れが変化しやすく、ブレ球が起こりやすかったとされる。

速いパス回しに向くボール

 では、どんな動きをするのか。科学的なデータを踏まえ、ブラズーカによって、戦術はどう変わっていくのだろうか。詳細に見ていきたい。

 筑波大の浅井武教授は、秒速35m(時速126km)までの風を送り出す風洞実験装置を使い、ジャブラニ、ブラズーカの二つのボールの空気抵抗が、さまざまな速度でどう変化するか調べた。空気抵抗が大きいと、パスは通りにくくなる。

 その実験の模様と、結果が以下の図だ。

ブラズーカの風洞実験の模様。風速を自在に変えて、そのときにボールの空気抵抗やボール裏側の空気の流れを調べる実験(浅井教授提供)

 ブラズーカ、ジャブラニも低速時には大きな抵抗がかかるが、一定の速度を過ぎると、ストンと抵抗が激減することがわかる。この点は「ドラッグクライシス」と呼ばれるが、ブラズーカは秒速13m、ジャブラニは17mでドラッグクライシスが発生することがわかる。ちなみに縫い目のない、表面がツルツルのボールだと25mまでは起きない。つまり、ツルツルのボールだと空気抵抗が大きすぎて、遠くに飛ばないことを意味する。

 浅井教授は「ブラズーカは秒速15m~25mの中速領域で、ジャブラニより抵抗は小さい。逆に25mを超えると、ジャブラニの方がやや小さくなる。しかし、ほぼ変わらないと言っていい。軽く蹴っても、遠くへボールを運べる。速いパス回しが得意なチームには有利ではないか。その意味で、体が小さい日本選手にとっては、体への負担が少なく、有利なボールと言える」と分析する。

図1 ジャブラニ(青線)、ブラズーカ(赤線)の特性を示すデータ。横軸は風速(秒速)、縦軸は空気抵抗の係数(数字が大きければ大きいほど空気抵抗が大きいことを示す)(浅井教授提供)
拡大画像表示

関連記事

新着記事

»もっと見る