2024年4月25日(木)

中国メディアは何を報じているか

2014年6月10日

「即発砲か、慎重にすべきか」
二つのジレンマ

中央テレビの報道特集「新聞1+1」(5月21日放送)では警官の銃器使用を取り上げ、陳情者射殺を疑問視した。写真のトラックを運転する男性はこの後射殺された
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 5月15日、公安系統内で「ためらわず剣を抜く」雰囲気が出来上がる中で、雲南省昭通市の鎮雄県の警察はトラックを鎮政府の正門前に横付けして往来を妨害した男性を射殺した。射殺した警官は同市の公安局に表彰された。しかしながら広州駅前広場での通り魔を射殺した警官には異なる評価が下され、論争を引き起こした。

 鎮雄県の検察は「警官の発砲は適切で、法に依拠した措置だった」と公表した。射殺された男性は経済的もめ事のため陳情を繰り返し、鎮政府正門で往来を妨害しており、事件の時には群衆が現場を取り巻いていたことを認めている。銃器の使用規定に基づけば、治安にかかわる係争や群衆の陳情では銃器を使用してはいけないことになっており、繁華街でも銃器を使用してはいけないことになっている。

 2009年2月、雲南省蒙自県公安局の警官が飲酒運転からもめ事を起こし、相手に発砲し、死亡させるという事件も起きた。警官には一審で死刑判決が下り、二審では抒情酌量の余地があるとして執行猶予付き死刑になった。同県公安局は市民に謝罪し、1カ月後、雲南省公安庁は厳しい罰則を設定し、「拳銃を濫用した者」に直接責任がある警官は一律に解雇、上司やより上層幹部も処分を受けることが決められた。しかし規定が厳格なのにもかかわらず、「発砲の濫用」についての定義を示しておらず、警官の「銃使用を躊躇する」気持ちが強まっただけだと見られている。

 解放軍西安政治学院・軍事法学部(軍の政治将校育成大学:筆者)の傅達林講師によると中国警察の銃器使用は二つのジレンマ(犯人制圧のための発砲か銃使用の濫用かという点:筆者)があり、その根本的原因は銃器使用についての法規制が未成熟なためだという。「表彰されるか、処分されるかという二分法では能力向上にはつながらない」というわけだ。

 警察の拳銃使用を鼓舞する傾向を疑問視する見方もある。「ボスが今日『ためらわず発砲せよ』と言うが、万一ことが起きれば今度は、ためらわず発砲せよとは言ったが、やたらに発砲せよとは言ってない、というかもしれない」という状況は依然存在し続けているためだ。


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