2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月20日

 奇妙なことに、4月30日の世銀の発表に関して、中国の統計局は、一定の留保をした。何故か。それは、世界一の大国になれば、それに伴う責任と義務が生じるからである。その意味でも、中国は、まだ世界一になる準備が出来ていない、と述べています。

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 上記論説は、「豊かな中国? 違うでしょ!」と題し、中国経済が今年にも世界一になるという世銀の予測に対して、疑義を呈したものです。昨今、台頭する巨大中国と、米国の力の低下が語られることが多いですが、それに対してカウフマンは、米国の優位はまだ揺るぎないと、大国の質を説いています。

 5月2日付けの英フィナンシャル・タイムズ紙でも、この問題が取り上げられました。中国については、大国に見合う国際基準の受け入れと、一党独裁から民主主義に移行することが重要だと論じています。その上で、今後、国際社会は、この大国中国と、どう付き合って行くかが課題である、と言います。

 鄧小平の改革開放路線以来30年余りの、毎年の中国経済の躍進には瞠目はしてきましたが、その蓄積で、中国がここまで大きくなったことに改めて印象付けられます。

 それは軍事バランスにおいて顕著です。20年前、日本の保有する第五世代F-15、200機に対して中国第五世代機は実質上ゼロでしたが、現在、日本はそのままで、中国側は500機を超えています。それだけの計算ならば、すでに尖閣上空の制空権は中国側に移っています。ただ、日本には日米同盟があり、在日米軍があります。

 中国経済の先行きについては、環境問題など悲観論は多いです。といっても、本当に破局が来るにしても、あと10年はかかるでしょう。その間、速度は落ちても、経済成長も、軍備増強も続くと考えなければなりません。東アジアのバランス・オブ・パワーの観点からは、ちょうど今年ぐらいに危険水域に入り、中国の成長がいずれ鈍るとしても、あと10年ぐらいは危機的な状況が続くと考えなければならないのでしょう。

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