2024年4月19日(金)

患者もつくる 医療の未来

2014年6月13日

 したがって今後しばらくの間は、さらなる規制緩和が進められるとしたら、医療用医薬品を一般用医薬品にスイッチしていくという形になるのではないかと考えられます。

医薬品販売の規制緩和はなぜ成長戦略なのか

 さて、このような流れは、なぜ成長戦略なのでしょうか? 薬剤師会の既得権益の一角を崩して、財界にも医薬品販売の利益の一部が回るようにしたというだけでは、日本経済全体が成長するとは言えません。

 成長戦略で成長させようとしているのは、小売業だけでなく薬を生産している製薬企業もだと考えられます。今や、保険診療で支払われている医療用医薬品は、健康保険組合や税金からの支出が、既に赤字になるほど出し尽くされていて頭打ちになっています。今以上に医薬品の生産と販売を広げるためには、一般用医薬品の売り上げを増やしていくという方向にシフトしていく戦略になるのだと考えられます。

 しかし、人口減少時代において、医薬品のネット販売が経済の「成長戦略」として位置づけられるということは、それが、医薬品が不要になるくらい国民の健康度を成長させることとは相反する戦略であることがわかります。

医薬部外品でさえ起こった重篤な副作用

 その結果、医薬品の大量消費時代が来るとしたら、消費者は、全ての医薬品には必ず副作用があるということを改めて肝に銘じておく必要があります。

 記憶に新しいところでは、2011年の「茶のしずく石鹸」による小麦アレルギー事件や、2013年の「カネボウ美白化粧品」による白斑事件(平成25年)などは、どちらも、人体に対する作用が医薬品に比べて緩和であるためにリスクが少ないとされる「医薬部外品」によって引き起こされた大規模な健康被害事件です。

 医薬品は、そもそも感受性の個人差がありますから、副作用に気を付けなければいけないのですが、同じ人でも、妊娠中だとか、他の薬との飲み合わせの問題などで、服用すべきでない時期が存在したりします。特に、非常に重篤な皮膚疾患や失明にも至る、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群:SJS)も、その大半が普通の風邪薬などの一般用医薬品の副作用が原因と推定されています。

 また、サリドマイドやスモンという日本で起こった歴史的な薬害事件は、どちらも、胃薬や整腸剤として広く販売されていた一般用医薬品によって引き起こされた悲惨な薬害でした。


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