世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月25日

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 南シナ海での石油掘削をめぐる中国とベトナムの対立は、ベトナムの国内政治にも波紋をもたらしている、とエコノミスト5月17-23日号が報じています。

 すなわち、中越関係は、様々なビジネス取引が成立し、貿易も好調であり、さらに、南シナ海の石油共同探査について政府間で協議するなど、良くなる一方のように見えたが、中国の国営石油企業CNOOCがベトナム中部の沿岸からわずか120海里の海域に石油掘削リグを設置したことで、状況は一変した。中国は、8月半ばまで撤収しないと述べ、船団まで送り込んでいる。しかも、そこは、1974年に中国が南ベトナムから奪ったパラセル諸島(西沙諸島)からさほど遠くない場所である。

 憤激したベトナムは、5月11日にミャンマーで開かれたASEAN会議で、自国の主権を守ると宣言し、団結を呼びかけたが、各国の反応は期待以下のものだったようである。ベトナムにはささやかな海軍しかなく、リグの強制撤去やパラセル諸島の奪還は望めない。ケリー米国務長官も中国の行動を「挑発的」と非難したが、米国がベトナムの救援に来ることはないだろう。

 一方、同じ11日、いくつかの都市、特にハノイで大規模な反中デモが起きている。権威主義国家のベトナムでは、通常、デモは警察や治安部隊が出動してすぐ終わりになる。その背景には、反中感情や中国に対して弱腰と見られることは、腐敗、土地収奪、表現の自由の制限等に不満を持つ人々を結束させる契機になりかねないとの政府・共産党の懸念がある。ところが、今回のハノイのデモにはお祭り的雰囲気があり、何時間も続いた。通常デモの報道は禁じられているが、ジャーナリストや公務員もデモ参加を許され、政府に批判的な分子も国民的団結を訴えてデモに加わった。

 国民の反中感情はベトナム政府にとって微妙な問題である。ハノイのある外交官は、政府は「沸騰させずに過熱状態の維持」を狙う、つまり、反中デモを国民の不満のガス抜きに利用するが、収拾がつかなくなることは許さないだろう、と言っている。しかし、国民の怒りは、政府が願うよりも強いかもしれない。14日、ホーチミン市に近い工業団地で労働者2万人が25の工場に放火し、死者が出た。

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