WEDGE REPORT

2014年6月20日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。近著は『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。

新規プロジェクトのメンバーは責任者が知り合いで固める、中長期的な会社の方向性を考えない中途採用……。ビジネスの現場を知らない「タコツボ人事」からの脱却が必要だ。

 米国の経営学者、故ピーター・ドラッカー氏は「起業家精神はしばしば大企業の中で生まれた」と説いた。米GEや米IBMなどが業態転換をしながら永続していることを指してのことだろう。ところが、現在の日本の大企業からは新規事業が生まれにくいように映る。電機産業の没落はそれを象徴している。その大きな要因は、経営者が専門性の高い有能な人材を適材適所に配置できなかったことにあるのではないか。

 自動車用ガラスで世界トップ級のシェアを持つ旭硝子が適材適所の人事を行うためのユニークな取り組みを始めている。それは、2010年から始めた「スキルマップ制度」と呼ばれる「人材の見える化」の推進だ。全社にどのようなスキルや知識を持った人材がいるのかをデーターベース化し、「ガラス」「電子」「化学品」といった社内カンパニーの枠を超えて新しいビジネスを創出していく狙いがある。

THINK STOCK

 たとえば、トヨタ自動車が10年、小型車「ヴィッツ」で採用した自動車用ドアガラスで紫外線を約99%カットする「UVベールプレミアム」は、旭硝子がトヨタに提案して世界初の商品化にこぎ着けた。UV吸収膜をガラスの表面にコーティングする手法を取っているが、これは「ガラス」と「化学品」の融合によって生まれた。また、開発プロセスでは、ドアガラスは昇降させるため、コーティングに傷が付いて耐久性などに課題が生じ、その解決には、開発チームと中央研究所や生産技術との連携も必要だった。
「UVベールプレミアム」は「スキルマップ制度」ができる前から社内横断的に取り組んでいたプロジェクトで誕生したものだが、「最近では社内カンパニーの括りだけでは、市場ニーズに対応できない局面が増え、社内の様々な知恵を融合させて新商品を出さないと競争に勝てない」と石村和彦社長は言う。

 こうした仕事の進め方を効率的に推進していくためにできたのが「スキルマップ制度」なのだ。社員1人が最大3分野まで自分の専門領域を登録、上司らがスキル度合いを5段階で評価する。現時点で、技術系では「ガラス材料」「樹脂設計」などの26分野、事務系では「営業・マーケティング」や「会計」など13分野に、計約8300人が登録。スキル以外にも、経験やリーダーシップ力、コンピテンシー(行動特性)までも管理されているという。

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