2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2014年6月24日

 家事代行を中心にシッター、介護支援のサービスを提供するベアーズ(東京・中央区)の髙橋ゆき専務取締役は、香港の商社で勤務していた際に、メイドを利用したことで2人の子どもを出産しながら仕事も続けられたという経験を持つ。これが元になって東京で会社を起業した。「日本にはシッターや家事代行は富裕層が使用するものという偏見がある」と指摘する。

不毛なRace to the bottom

 法人税率については「現状は引き下げざるを得ない状況だが、日本が“Race to the bottom”(グローバル競争のなかで税率などを最低水準に近づけていくこと)競争に加わることは得策ではない」と、元財務省で中央大学法科大学院の森信茂樹教授は指摘する。

 シンガポールの人口は約540万人。片や日本は、認知症患者だけでも約439万人(2010年、厚生労働省推計)を超す。「むやみに減税競争に加われば、福祉国家が支えられなくなる」(森信教授)。

 一方、「法人税が低いからという理由だけでシンガポールに進出したという企業を聞いたことがない」と、シンガポールに4年駐在した経験を持つ、日本政策投資銀行の川住昌光地域企画部長は指摘する。「むしろ、アジアをはじめ、世界中から優秀な人材が集まっているからこそ、企業はシンガポールを目指している」(川住氏)。

 優秀な人材を担保するのが世界に通用する教育機関だ。世界トップクラスのビジネススクールであるINSEAD(インシアード)。欧州キャンパスはフランス・フォンテンブローにあり、アジアキャンパスがシンガポールにある。また、名門シカゴ大学の経営大学院もロンドンと、シンガポールに分校があり、13年にはイェール大学がシンガポール国立大学と提携してはじめて海外で開校した。

東京にしかない付加価値とは?

 東京都は「アジアヘッドクォーター特区」を掲げ、東京を研究開発拠点としてもらうべく企業に誘致を行っているが、世界の教育機関も同時に誘致するという戦略があってもよいのかもしれない。

 「経済の軸が西にシフトしていくなかで、企業が東京に拠点を置く必然性は少なくなっている」という声は多い。それでも、あえて東京に来てもらうにはどうしたらよいのか。それにはシンガポールをフォローすると同時に、東京に独自の付加価値を高めていくしかない。しかし、その独自の付加価値とは何か? 見えてこない。


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